怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 秋葉とあかねが強い眼差しで一同を見据える。彼らは居心地が悪そうに口をもぞっと動かした。それでも猪口は、「だけど――」と声を張ったが、要に遮られた。

「あのさぁ。知らない? 死体遺棄罪ってのがこの国にはあんの。死体損壊罪とかさ。あたし達が大島さんの死体を隠したとしたら、み~んなその罪に問われるよ? あんたらが詐欺の疑いをかけられようが、殺人の疑いをかけられようが、そのためにうちらを罪人にして良いって理屈は通らないのよ。解る?」
「そ、そうよね。その通りよ! 私、関係ないし! 猪口さんにのせられて罪作るなんて、イヤよ!」

 笹崎が吠えて、「早く電話しなさいよ」と田中を急かした。田中はカウンターへ小走りで向う。

「何よ、私は、あなた達を想って提案したのよ!」

 猪口は訴えるようにジャブダルと上河内、笹崎を見たが、彼らは突き放す視線を送った。猪口はわなわなと唇を震わせて、ヒステリックに叫んだ。

「もう良いわ! 私は、警察が来るまで部屋で休んでるから! 誰も入って来ないでちょうだい!」

 切って捨てるように言いつけて、猪口はリビングをあとにした。それを白けた目で見送って、秋葉が由希を抱え上げた。由希は依然として気絶したままだ。

「じゃあ、俺、部屋まで由希運んで来るわ」

 よろしくと声をかけて要は部屋の観察を始めた。先程見た限りでは、ソファに異常はなかったが、テーブルの下に水が零れた跡があった。他にも何かあるかも知れない。要は、慎重にリビングを見て回る。そこに、訝しがった声が聞こえた。
 
「あれ? どうしてだ?」

 田中がしきりに首を傾げている。

「どうしたんですか?」

 あかねが近づきながら尋ねると、田中は振り返って不安げな表情を向けた。

「電話が通じないんだ」
「え?」

 一瞬、嫌な予感が過ぎったが、あかねは振り切るように小さく首を振って、田中から受話器を借りた。耳につけるが、なんの音も聞こえて来ない。

「本当だ……。要、電話通じないよ」

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