怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 *

「そもそも、大島さんは何故交霊会をしようとしたんだと思います?」

 要は一階の廊下で質問を投げかけた。田中が軽く手を挙げながら、

「それは、僕が相談したからでしょう?」
「だったら普通、霊能力者に頼ろうと思うよりもまず、寺か神社に相談してお祓いしてもらうって考えない?」
「いや、それは多分、僕が以前お坊さんに来てもらって除霊してもらったって話したからだと思います。それで効果がなかったから霊能者を呼ぼうと……。確かそんな流れだったと思いますけど」

 田中は記憶を辿るように視線を這わせた。

「前にも言ったけど、そういう流れだったとしても、するのは普通、交霊会じゃなくて除霊なんじゃない?」
「私らは大島さんや田中さんに頼まれて交霊会を行っただけだぞ。依頼はそもそも除霊じゃない。交霊会だった。なあ、上河内?」
「ええ。交霊会をしたいという大島さんからの依頼でしたよ」
「僕はその辺は彼女に頼りっぱなしだったから……」

 苦笑しながら、田中は頬を掻く。

「要は交霊会をするのが大島さんの目的だったって言いたいの?」
「正確に言えば、交霊会の〝やらせ〟をするのが目的だったのよ」
「どういうことだ?」

 ジャブダルは切迫した表情で身を乗り出した。上河内と笹崎は不安げな顔つきで互いを見る。あかねと由希は驚いて目を丸くしたが、秋葉は納得がいった表情を浮かべていた。田中が困惑しながら、

「えっと、それは……ジャブダルさん達も関わってるってことですか?」
「何を言う!」
「すいませんっ!」

 ジャブダルに怒鳴られて田中は条件反射的に謝ったが、どことなく胡乱気な視線を送った。

「ジャブダルさん達は確かに怪しいけど、やらせには関わってないよ。むしろ、被害者になるところだったのよ」
「え?」

 大島の最後を思い出したのか、笹崎が恐怖の色濃く呟いた。そこにすかさず、要が付け足す。

「〝殺人の〟じゃないよ。営業妨害とか風評被害ってとこかな」
「どういうことなんです?」
「さっさと説明してよ!」

 上河内と笹崎に急かされたが、要は飄々とした態度は崩さずに秋葉の名前を呼んだ。呼ばれた秋葉は、うんと相槌を打って、

「要が見つけて、俺もまあ、目撃したっつーか、知ったんだけど、大島さんってティーチューバーだったんだよ。そこで、荒らしや仮面って名前で動画投稿してた」
「荒らしや? 先生ご存知ですか?」
「いいや。有名なのか?」
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