怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
第四章
要達は数時間だけ仮眠をとることにした。太陽が顔を出した頃には、起き出して道路の捜索に出なければならない。例え数時間だけでも寝るに越したことはなかったが、あかねだけは朝が弱いため、徹夜すると言って起きていた。その際、あかねは要に上河内のことを話した。
誰かを殺しそうになると変なことを言っていたと告げたとき、要は妙な顔をした。思い当たるふしがあるような、深刻な表情だった。だが、それは一瞬で消え、いつものおちゃらけた調子に戻り、あかねは気にしいだなぁとだけ言ってベットに潜った。
あかねは一息だけつき、おやすみと全員に告げると、しばらく持って来ていた歴史の教科書を読みふけっていたが、少し横になろうとベットに潜った。すると、上の段のベットから由希の呻き声が小さく聞こえて来た。
大丈夫? そう声をかけようとしたときだ。部屋のドアが僅かに開いた。あかねは驚いて、思わず布団に潜る。ヒタヒタと、静かに足音を立てないように、誰かが歩いてくる気配がした。あかねは勇気を出して、目まで布団をずらす。窺い見ると、誰かがベットの脇を通って行った。
容姿は判らない。黒い靄がかかったように、あるいは影のようにシルエットが暗い。男なのか、女なのかも判別がつかない。ただの〝影〟だけが独り歩きしているようだった。こんなことは、ありえない。あかねは、ドキドキと逸る心臓を布団の中で押さえつける。
影が進んだ窓の方向をそろりと窺う。白み始めた空の淡い光を受けても誰なのか分からない。だが、どこか知っているような気がする。
影は、テーブルの上に置かれていたノートパソコンをおもむろに取ると、振り返った。あかねは反射的にパッと目を閉じる。影はそろそろとすり足でドアの方向へ歩いて来る。
(早く行って!)
恐怖で震えながら、強く目を瞑る。だが、突然、足音が聞こえなくなった。ピタッとどこかで止まったように、もしくは忽然と消えてしまったかのように、なんの音も聞こえない。
(もしかして、もう消えた? 行っちゃった?)
あかねはほっとして、目を開けた。その瞬間、目の前に黒いものがあった。ただ、黒いもの。それが突然、ニッと笑った。いきなりむき出しになった白い歯が、闇夜に浮かんでいるように見えた。
「キャアアア!」
あかねは悲鳴を上げた。パニックになって、枕を影に叩きつける。這いずってベットを出た瞬間、足がもつれた。肘を強打して床に転がる。痛みを感じる暇もなく、叫びながら振り返る。あかねの眼に信じがたいものが飛び込んできた。影が、パソコンを振り上げていた。それは一瞬にして、あかねの頭目掛けて振り下ろされた。
誰かを殺しそうになると変なことを言っていたと告げたとき、要は妙な顔をした。思い当たるふしがあるような、深刻な表情だった。だが、それは一瞬で消え、いつものおちゃらけた調子に戻り、あかねは気にしいだなぁとだけ言ってベットに潜った。
あかねは一息だけつき、おやすみと全員に告げると、しばらく持って来ていた歴史の教科書を読みふけっていたが、少し横になろうとベットに潜った。すると、上の段のベットから由希の呻き声が小さく聞こえて来た。
大丈夫? そう声をかけようとしたときだ。部屋のドアが僅かに開いた。あかねは驚いて、思わず布団に潜る。ヒタヒタと、静かに足音を立てないように、誰かが歩いてくる気配がした。あかねは勇気を出して、目まで布団をずらす。窺い見ると、誰かがベットの脇を通って行った。
容姿は判らない。黒い靄がかかったように、あるいは影のようにシルエットが暗い。男なのか、女なのかも判別がつかない。ただの〝影〟だけが独り歩きしているようだった。こんなことは、ありえない。あかねは、ドキドキと逸る心臓を布団の中で押さえつける。
影が進んだ窓の方向をそろりと窺う。白み始めた空の淡い光を受けても誰なのか分からない。だが、どこか知っているような気がする。
影は、テーブルの上に置かれていたノートパソコンをおもむろに取ると、振り返った。あかねは反射的にパッと目を閉じる。影はそろそろとすり足でドアの方向へ歩いて来る。
(早く行って!)
恐怖で震えながら、強く目を瞑る。だが、突然、足音が聞こえなくなった。ピタッとどこかで止まったように、もしくは忽然と消えてしまったかのように、なんの音も聞こえない。
(もしかして、もう消えた? 行っちゃった?)
あかねはほっとして、目を開けた。その瞬間、目の前に黒いものがあった。ただ、黒いもの。それが突然、ニッと笑った。いきなりむき出しになった白い歯が、闇夜に浮かんでいるように見えた。
「キャアアア!」
あかねは悲鳴を上げた。パニックになって、枕を影に叩きつける。這いずってベットを出た瞬間、足がもつれた。肘を強打して床に転がる。痛みを感じる暇もなく、叫びながら振り返る。あかねの眼に信じがたいものが飛び込んできた。影が、パソコンを振り上げていた。それは一瞬にして、あかねの頭目掛けて振り下ろされた。