怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
捜索隊は三組に別れた。ジャブダルと田中は一般道を出て坂を下り、三叉路の右方面へ向い、笹崎と上河内は坂を上って捜索することになった。由希と要はペンションの敷地を探してから三叉路の左方面へ進むことになった。
「要ちゃん、一緒に行かなくて良かったの?」
一行と別れてペンションの玄関まで引き返して来た要の背に、由希は話しかけた。上河内達と捜索に赴いたのだが、門を出たところで要は急にトイレに行って来ると言って引き返して来た。その際に由希に目配せを送ったので、由希は何かあるのだと勘付いて、自分もトイレに行ってから捜索すると告げて要の後を追った。
要は由希の問いに端的に、「うん」とだけ答えて、玄関のドアを開けずにペンション沿いを歩き始めた。
角を曲がると建物に平行するように低木が生えていて、手前を茂みが覆っている。少し進むと勝手口があった。
「何探してるの?」
「手掛かり。もしかしたらあかね達が何か残してるかも知れないし。おかめを撒いて戻って来てるかも知れないでしょ」
「戻って来てたらペンションに入るんじゃないの?」
「いや。ここの連中に襲われた可能性もあるから、戻って来てても入れないんじゃないかな? また襲われたくないだろうし」
「え? 秋葉ちゃん達って、ここの人達に襲われたの?」
驚いた由希を振り返って、要は冷静に言った。
「逃げた猪口が戻ってきて証拠隠滅を図ったってこともあるだろうけど、ここの人間の可能性だってないわけじゃないでしょ? それに、由希の話で、最初は幽霊の仕業かなって思ったんだけど、途中から明らかに生きてる人間だって判ったんじゃない? 由希だって。と、すれば、あたし達以外にはいない――でしょ?」
「……確かに、今まで視た幽霊とは違ってた。でも、アレが本当に人間なのかって訊かれると……」
由希は突然、言葉を詰まらせ、表情を曇らせた。眉根を寄せ、苦しそうに顔を顰めると胸を押さえてしゃがみ込む。
「どうしたの?」
要が駆け寄るよりも早く、由希はすっと指を茂みの方へ指した。要は一瞬戸惑ったが、すぐに由希が指した方へ駆けると、茂みを覗いた。そこには血溜まりがあった。脇に、不自然な物が落ちている。
(なんだろう?)
首を傾げたのは、一瞬だった。
それは、要も良く知っている物だった。
人間の、舌だ。
「要ちゃん、一緒に行かなくて良かったの?」
一行と別れてペンションの玄関まで引き返して来た要の背に、由希は話しかけた。上河内達と捜索に赴いたのだが、門を出たところで要は急にトイレに行って来ると言って引き返して来た。その際に由希に目配せを送ったので、由希は何かあるのだと勘付いて、自分もトイレに行ってから捜索すると告げて要の後を追った。
要は由希の問いに端的に、「うん」とだけ答えて、玄関のドアを開けずにペンション沿いを歩き始めた。
角を曲がると建物に平行するように低木が生えていて、手前を茂みが覆っている。少し進むと勝手口があった。
「何探してるの?」
「手掛かり。もしかしたらあかね達が何か残してるかも知れないし。おかめを撒いて戻って来てるかも知れないでしょ」
「戻って来てたらペンションに入るんじゃないの?」
「いや。ここの連中に襲われた可能性もあるから、戻って来てても入れないんじゃないかな? また襲われたくないだろうし」
「え? 秋葉ちゃん達って、ここの人達に襲われたの?」
驚いた由希を振り返って、要は冷静に言った。
「逃げた猪口が戻ってきて証拠隠滅を図ったってこともあるだろうけど、ここの人間の可能性だってないわけじゃないでしょ? それに、由希の話で、最初は幽霊の仕業かなって思ったんだけど、途中から明らかに生きてる人間だって判ったんじゃない? 由希だって。と、すれば、あたし達以外にはいない――でしょ?」
「……確かに、今まで視た幽霊とは違ってた。でも、アレが本当に人間なのかって訊かれると……」
由希は突然、言葉を詰まらせ、表情を曇らせた。眉根を寄せ、苦しそうに顔を顰めると胸を押さえてしゃがみ込む。
「どうしたの?」
要が駆け寄るよりも早く、由希はすっと指を茂みの方へ指した。要は一瞬戸惑ったが、すぐに由希が指した方へ駆けると、茂みを覗いた。そこには血溜まりがあった。脇に、不自然な物が落ちている。
(なんだろう?)
首を傾げたのは、一瞬だった。
それは、要も良く知っている物だった。
人間の、舌だ。