怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
思わず息を詰めた要の隣に、由希が苦しそうにしながらやって来る。
「えっ!?」
目を丸くして要の服にしがみついた。
「由希、何を視たの?」
由希はかぶりを振った。
「視てない。ただ、気分が悪くなって、気づいたら指を向けてたの」
「今、制御してる?」
「うん」
不安げに小さく頷いた由希に、要は申し訳なさそうに言った。
「制御するの止めて、視れる?」
「うん。やる」
由希は二つ返事で答えた。
目を瞑り、軽く息を吐くと、目を開く、深く深呼吸をして、息を吐き切ったところで瞬間的に息を止め、瞬きをして、また軽く息をする。
「出来る?」
「うん。もう普通の状態」
端的に答えて、由希は辺りを見回した。すると、ペンションの端に隠れるようにして誰かがこちらを覗いていた。
「大島さん」
呟いた由希を要は驚いて見据える。大島さんがいるの? と声をかけたかったが、ぐっと堪えた。
大島は由希に気づいてじっと見つめると、ふと消えた。そう思ったのも束の間、由希の隣に現れ、じっとまた由希を不思議そうに見つめる。
「もしかして、ご自分がお亡くなりになったことに気づいていないんですか?」
由希が話しかけると、大島はきょとんとした。
『死んだ? 私が?』
「ええ。あなたは、亡くなったんです」
『死んだ……?』
大島は深刻な表情で一点を凝視する。その目は虚ろだ。由希はぞっとした。良くない類の霊に出遭ってしまったときの感覚に似ていたからだ。
「ねえ由希、訊いてもらって良い?」
由希は青白い顔で振り返り、うんと頷く。そろそろ限界かと、要は由希を心配する一方で何か情報を得なければと焦った。
「大島さんはあかね達がどこにいるか知ってる?」
要の質問を声に出して繰り返すことなく、由希は大島を見据えた。大島は、
『沢松さん? 知らない。ねえ、アノ人が怖いのよ。黒い靄みたいなものを纏ったアノ人がいる。怖いの。なんとかしてよ。お願いよ。あなたにはアノ人が視えないの?』
虚ろな目でただ自分の訴えだけをつらつらと述べた。抑揚が無く、感情も窺えない。
ああ、この人はダメだな。由希はそう思った。その瞬間、
『キャアアアアア!』
大島は突然、絶叫した。あっという間に体に火が点く。火達磨になりながら、大島は叫んだ。
「えっ!?」
目を丸くして要の服にしがみついた。
「由希、何を視たの?」
由希はかぶりを振った。
「視てない。ただ、気分が悪くなって、気づいたら指を向けてたの」
「今、制御してる?」
「うん」
不安げに小さく頷いた由希に、要は申し訳なさそうに言った。
「制御するの止めて、視れる?」
「うん。やる」
由希は二つ返事で答えた。
目を瞑り、軽く息を吐くと、目を開く、深く深呼吸をして、息を吐き切ったところで瞬間的に息を止め、瞬きをして、また軽く息をする。
「出来る?」
「うん。もう普通の状態」
端的に答えて、由希は辺りを見回した。すると、ペンションの端に隠れるようにして誰かがこちらを覗いていた。
「大島さん」
呟いた由希を要は驚いて見据える。大島さんがいるの? と声をかけたかったが、ぐっと堪えた。
大島は由希に気づいてじっと見つめると、ふと消えた。そう思ったのも束の間、由希の隣に現れ、じっとまた由希を不思議そうに見つめる。
「もしかして、ご自分がお亡くなりになったことに気づいていないんですか?」
由希が話しかけると、大島はきょとんとした。
『死んだ? 私が?』
「ええ。あなたは、亡くなったんです」
『死んだ……?』
大島は深刻な表情で一点を凝視する。その目は虚ろだ。由希はぞっとした。良くない類の霊に出遭ってしまったときの感覚に似ていたからだ。
「ねえ由希、訊いてもらって良い?」
由希は青白い顔で振り返り、うんと頷く。そろそろ限界かと、要は由希を心配する一方で何か情報を得なければと焦った。
「大島さんはあかね達がどこにいるか知ってる?」
要の質問を声に出して繰り返すことなく、由希は大島を見据えた。大島は、
『沢松さん? 知らない。ねえ、アノ人が怖いのよ。黒い靄みたいなものを纏ったアノ人がいる。怖いの。なんとかしてよ。お願いよ。あなたにはアノ人が視えないの?』
虚ろな目でただ自分の訴えだけをつらつらと述べた。抑揚が無く、感情も窺えない。
ああ、この人はダメだな。由希はそう思った。その瞬間、
『キャアアアアア!』
大島は突然、絶叫した。あっという間に体に火が点く。火達磨になりながら、大島は叫んだ。