怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
『熱いっ! 熱いぃ! 消して! 消してよぉ! なんで私が死ななくちゃいけないの! 私はなんにも悪くないのに! 殺してやる! 殺してやるっ!』
大島は由希を睨みつけ、しがみつこうとした。だが、手のひらは由希の体を貫き、触れられず、ヒステリックに叫ぶ。
由希に、ぞわっとした悪寒が走った。内蔵が押し上げられるような感覚が襲い、感じていた頭の痛みが更にひどくなる。その瞬間、どす黒い煙のようなものが、ペンションの壁から突き抜けて来て大島を包み込んだ。一瞬だけ大島は叫び声を上げて、全て何もなかったように掻き消えた。辺りは途端に清涼な空気に包まれる。それを感じた瞬間、
「オエエ!」
由希は嘔吐し、ガンガンと締め付けていた頭の痛みが和らいだことを自覚した。そして、闇に引き込まれるように意識を失った。
*
要は由希を引き摺ってペンションの中へ運び、ソファに寝かせた。
「無理させて、ごめん」
由希の髪を撫で、申し訳ない気持ちを深呼吸で吹き飛ばし、要は先程の茂みへ向った。血のついた茂みは、勝手口からそう遠くない。要は嫌な予感がしたときのことを思い出した。勝手口から闇夜を覘いた夜、誰かにそれを止められた気がしたあのときのことを。
要は不安を払拭するように一息つくと、服を脱ぎ、勝手口についている照明のセンサーに被せる。夜だと勘違いしたセンサーが要の動きを捉えて明かりをつけた。光は壁と勝手口のドアに当たり、半円だけを地面に落とす。その光りの輪がちょうど外れたところに血がこびりついた茂みがあった。
要の頭にある考えが浮かぶ。それを確かめようと、茂みを覗きこんだ。血の量は多いが、二人分ではない。血がついているのは一箇所だけだ。飛沫は僅かに飛んでいるが、二人が刺されたのなら少なくとも血の跡は二箇所はあるはずだ。だから少なくとも、あかねと秋葉が刺されて出来た血溜まりではない。
「これってもしかして、行方不明になってる猪口の血なんじゃ?」
猪口は死んだ? 殺された? それとも事故か自殺? だが、血溜まりの量は致死量に至る程だろうか? この血痕は舌を切られた出血であると仮定する方が現実的だ。ともすれば、舌を切られたショックで死ぬ可能性は低いだろう。
(じゃあ、猪口は生きてる?)
大島は由希を睨みつけ、しがみつこうとした。だが、手のひらは由希の体を貫き、触れられず、ヒステリックに叫ぶ。
由希に、ぞわっとした悪寒が走った。内蔵が押し上げられるような感覚が襲い、感じていた頭の痛みが更にひどくなる。その瞬間、どす黒い煙のようなものが、ペンションの壁から突き抜けて来て大島を包み込んだ。一瞬だけ大島は叫び声を上げて、全て何もなかったように掻き消えた。辺りは途端に清涼な空気に包まれる。それを感じた瞬間、
「オエエ!」
由希は嘔吐し、ガンガンと締め付けていた頭の痛みが和らいだことを自覚した。そして、闇に引き込まれるように意識を失った。
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要は由希を引き摺ってペンションの中へ運び、ソファに寝かせた。
「無理させて、ごめん」
由希の髪を撫で、申し訳ない気持ちを深呼吸で吹き飛ばし、要は先程の茂みへ向った。血のついた茂みは、勝手口からそう遠くない。要は嫌な予感がしたときのことを思い出した。勝手口から闇夜を覘いた夜、誰かにそれを止められた気がしたあのときのことを。
要は不安を払拭するように一息つくと、服を脱ぎ、勝手口についている照明のセンサーに被せる。夜だと勘違いしたセンサーが要の動きを捉えて明かりをつけた。光は壁と勝手口のドアに当たり、半円だけを地面に落とす。その光りの輪がちょうど外れたところに血がこびりついた茂みがあった。
要の頭にある考えが浮かぶ。それを確かめようと、茂みを覗きこんだ。血の量は多いが、二人分ではない。血がついているのは一箇所だけだ。飛沫は僅かに飛んでいるが、二人が刺されたのなら少なくとも血の跡は二箇所はあるはずだ。だから少なくとも、あかねと秋葉が刺されて出来た血溜まりではない。
「これってもしかして、行方不明になってる猪口の血なんじゃ?」
猪口は死んだ? 殺された? それとも事故か自殺? だが、血溜まりの量は致死量に至る程だろうか? この血痕は舌を切られた出血であると仮定する方が現実的だ。ともすれば、舌を切られたショックで死ぬ可能性は低いだろう。
(じゃあ、猪口は生きてる?)