怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「お、思ってないです……」
「じゃあ、言っちゃお。言って楽になっちゃおうよ。ねえ、呉野ちゃん?」
「で、でも怖いです」
「だぁいじょうぶだって! 人に話せばその分気持ちが軽くなるってもんよ。でしょ?」
「で、ですが……」
「呉野ちゃんの負担、あたし減らしてあげたいっ!」
「ちょっとやめなさいよ要! 先輩はイヤだって言ってるじゃないの!」
「確かに話せば気が楽になることもあるが、無理強いは良くないと思うぞ」
両脇から咎められて、要は密かに舌打ちをした。両脇にいるあかねと秋葉をそれぞれ交互に振り返って、
「だってもしかしたらクラブの初の活動になるかも知れないんだよ。みすみす見逃せっての? あたし、秋葉とあかねと一緒にクラブの思い出作りたいの。青春の一ページをあかねと秋葉と作りたいのよ! 大人になったとき、バカやったねって笑い合いたいのよ!」
「要……」
「お前、そこまで俺達と……」
あかねは要の言葉に目尻を拭った。秋葉は感動する気持ちを抑え、よしっと呟くとまっすぐに呉野を見やる。
「呉野先輩。洗いざらい吐いちまえ」
「は!?」
「ごめんなさい呉野先輩。――楽になっちゃいましょう」
「沢松、お前までっ!」
(よぉおぉおっしゃっ!)
心の中で長めのガッツポーズを繰り出した要は、呉野の頭に手を置いた。それを呉野は叩き落とし、思い切り指を指す。
「お前ら騙されてるですっ! 吉原がそんなたまですかっ!」
「まあまあ、落ち着いて呉野ちゃん。一瞬黙ろうか?」
「黙るのはお前ですぅ!」
「ハイハイハイハイ。で、どうなのよ?」
要は呉野の頭を強く押して席に座らせた。渾身のつっこみを文字通り力技でねじ伏せられて、呉野は盛大に頬を膨らませ、そしてついに観念した。大きく空気を吐き出して、
「分かりましたよ。言うです」
呉野が訊いた話によれば、富山のある地方で十六人谷という怪談があるらしい。大昔、ある木こりのもとに若く美しい女が尋ねてきて、夫婦柳を切らないで欲しいと懇願した。
男は酒に酔っていたため、空返事をし、眠ってしまった。翌朝仲間と仕事に出た際に大きくて立派な柳の木を見つける。男は了承したことなどすっかり忘れて、柳の木を一本切り倒してしまった。
夜が来て、酒盛りに夢中になる十六人の木こりのもとに、あの若い女がやって来た。
〝約束したのに、裏切り者!〟
「じゃあ、言っちゃお。言って楽になっちゃおうよ。ねえ、呉野ちゃん?」
「で、でも怖いです」
「だぁいじょうぶだって! 人に話せばその分気持ちが軽くなるってもんよ。でしょ?」
「で、ですが……」
「呉野ちゃんの負担、あたし減らしてあげたいっ!」
「ちょっとやめなさいよ要! 先輩はイヤだって言ってるじゃないの!」
「確かに話せば気が楽になることもあるが、無理強いは良くないと思うぞ」
両脇から咎められて、要は密かに舌打ちをした。両脇にいるあかねと秋葉をそれぞれ交互に振り返って、
「だってもしかしたらクラブの初の活動になるかも知れないんだよ。みすみす見逃せっての? あたし、秋葉とあかねと一緒にクラブの思い出作りたいの。青春の一ページをあかねと秋葉と作りたいのよ! 大人になったとき、バカやったねって笑い合いたいのよ!」
「要……」
「お前、そこまで俺達と……」
あかねは要の言葉に目尻を拭った。秋葉は感動する気持ちを抑え、よしっと呟くとまっすぐに呉野を見やる。
「呉野先輩。洗いざらい吐いちまえ」
「は!?」
「ごめんなさい呉野先輩。――楽になっちゃいましょう」
「沢松、お前までっ!」
(よぉおぉおっしゃっ!)
心の中で長めのガッツポーズを繰り出した要は、呉野の頭に手を置いた。それを呉野は叩き落とし、思い切り指を指す。
「お前ら騙されてるですっ! 吉原がそんなたまですかっ!」
「まあまあ、落ち着いて呉野ちゃん。一瞬黙ろうか?」
「黙るのはお前ですぅ!」
「ハイハイハイハイ。で、どうなのよ?」
要は呉野の頭を強く押して席に座らせた。渾身のつっこみを文字通り力技でねじ伏せられて、呉野は盛大に頬を膨らませ、そしてついに観念した。大きく空気を吐き出して、
「分かりましたよ。言うです」
呉野が訊いた話によれば、富山のある地方で十六人谷という怪談があるらしい。大昔、ある木こりのもとに若く美しい女が尋ねてきて、夫婦柳を切らないで欲しいと懇願した。
男は酒に酔っていたため、空返事をし、眠ってしまった。翌朝仲間と仕事に出た際に大きくて立派な柳の木を見つける。男は了承したことなどすっかり忘れて、柳の木を一本切り倒してしまった。
夜が来て、酒盛りに夢中になる十六人の木こりのもとに、あの若い女がやって来た。
〝約束したのに、裏切り者!〟