怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 もしも、大島が死ななければ、猪口を大島が殺害するという計画があったのかも知れない。だとしたら、警察を呼ばれないための時間稼ぎだと言えるが、大島が共犯者である猪口を殺す理由はなんだろうか。そこまで考えたとき、要の頭にあることが浮かんだ。

「もしかして、もう一人いる?」

 計画的か、それとも、偶発的に猪口を殺してしまったのかは判らないが、猪口を刺した誰かは大島のドッキリの共犯者なのかも知れない。もしも、あの残された血痕が事故によってついたものでないのなら……。

「とにかく、スマホはもう一台あるはずだ」

 要は部屋を見回した。
 水に沈められたスマートフォンは全部で七台。大島と猪口がスマートフォンを提出していなかった場合、もう一人誰かあの場に持って来なかったか、提出しなかった人がいるはずだ。そしてその人物は何故か、この期に及んで自分のスマートフォンで警察を呼ぼうとは考えていないらしい。

「共犯、三人説。濃厚になって来たかな」

 要はにやっと口の端を上げた。

「さて、鬼の居ぬ間に部屋を漁らせていただこうかね」

 *

 要が大島の部屋を出ると由希が起きていた。体調はもう大丈夫なようで、要を見かけて由希はにこりと微笑んだ。要は自分がした推理を披露した。由希もまた、何を視たのか、大島から何を聞いたのかを全て話した。

「大島さんタイプの幽霊は結構視たことがあるの。自分が死んだことをまだ受け入れていなくて、自分の要求だけを突きつけてくるタイプ。その本人の性格がどうとかじゃなくて、ひとつのことに囚われていたり、思念が強かったり、とにかく話が通じない。でも、こういう霊は数多くいるんだ。実は、まともに話せる幽霊の方が少ないくらい。まあ、話が通じるくらい冷静なら、あの世に行ってるってことなのかも知れないけど」

 由希はふと苦笑を漏らす。

「単純な疑問なんだけど、霊同士でお互いを認識してたりするの?」
「認識する者もいるみたい。でも、波長が合わなくて認識せずに同じ空間にいることもあるみたいなんだ。わざと見ないようにしてる霊もいたかな、昔」
「それはどんなだったの?」
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