怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「どうしたの?」
「……燃える……」
「え?」

 断末魔の叫びが由希の耳の中で響く。
 耳を塞ぐ間もなく、誰かが炎に包まれて、絶叫を上げる様が浮かんだ。ぶわっと、脂汗が噴出す。映像は、瞬間的なもので終わった。
 
 由希はへなっと座り込む。要が心配して大声を出したが、呆然としてしまって、耳に届かない。そこに、ふと少女が現れた。
 彼女は小屋の横にいて、じっと由希を見つめた後、囁くように言った。

『燃やされた。みんな、そう。でも、あの人だけは砕かれた』

 すっと、焼却炉に指を向ける。

『アノ人、怖い』



 ぽつりと告げると、煙のように消えた。
 由希は瞬きをすると、汗を袖で拭った。要の力を借りて立ち上がると、隣で心配する要を無視し、由希は突然走り出した。

 かんぬきを抜いて、ドアを開けると小屋の中へ入る。要も後を追った。由希は一目散に鉄扉を開く。カマドには灰が詰まっていた。その中に、変形したプラスチックがある。熱でネジくれていたが、元々は長方形の何かのようだった。

 だが、由希が釘付けになっていたのは奥の灰だ。それを横目に、要は端に置いてある台を何気なく触った。ざらっとした感触がする。白い粉があるが、埃ではなかった。その中に小さな欠片を見つけた。耳栓のような形の白く、平たく、硬い塊だ。要はひょいと拾い上げてまじまじと見る。

(あれ、これって……)
「要ちゃん。ごめん、ただの直感なんだけど」

 由希に呼ばれて、要は振り返る。由希は青白い顔で言った。

「これ、もしかしたら人間の灰かも知れない」

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