怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 *

 由希から話を聞いた要は、とりあえず灰を摂取し、ビニール袋に詰め、発見した白い欠片をポケットにしまった。それから数十分休憩をとると、由希の体調は回復し、要達は再び歩き出した。

 三叉路は歩いて十分もしないところにあった。左の道はアスファルトが続いているが、右の道は途中から砂利道へ変わっていた。

 要達は左側の道を進んだ。大きくカーブしながら続いている道路は、広くはないが狭いと言うほどでもない。しばらく歩くと突き当たりに差し掛かった。

 道路が途中でカーブを描くようにして途切れ、目の前には森が広がっている。
 左右にも木々が生えていた。右の森はおそらく、正面の森と同じように先程分かれた道の先と繋がっている森林だろう。

 左側は林の中の藪といった感じで、折れた木々の枝が積み重なっている。高さはおそらく秋葉と同じくらいの百八十センチ前後だ。その先は林が続いているように見えた。

「道、ないね。あかねちゃん達が言ってた通り」
「いやぁ……でも、な~んか、変だな?」

 要は首を傾げる。何がおかしいのかは判らないが、何かが変だと感じた。

「由希は何か感じない?」
「ううん。何も」
「他に道ってないのかなぁ? 道のことで覚えてることってない?」
「来るときの道かぁ……」

「あたし、行きの車の中で寝ちゃったから全然ここまでの道程って覚えてないんだよね。山の中から砂利道に入ったところまでは覚えてるんだけど。あかね達ももしかしたら抜け道的なものを見つけたかも知れないしさ」
「要ちゃんごめん。わたしも途中で寝ちゃったんだ。村に入ったところまでは起きてたんだけど」
「誰か覚えてそうな人っている?」
「あ~……」

 由希は唸るように言って、

「多分、いないかも知れない」
「え?」

「わたしが車の中で起きたときは、もうペンションについてたんだけど、そのとき、みんな寝てたみたいだから」
「……マジで?」

「うん。起きたのわたしが一番早かったから確かだと思う。隣にいた上河内さんも寝てたから、わたしが起こして。で、上河内さんはジャブダルさんを起こしてたから……笹崎さんも声で起きたみたいで、隣で寝てた田中さんをその後起こしてたから、運転してた大島さん以外はみんな寝ちゃってたみたいだよ」

 要は嫌悪感が混じったような怪訝な表情を浮かべた。

「それ、おかしい」
「でも、車で寝ちゃうことってけっこうあるような?」
「違うんだよ、由希」
「ん?」

 不意に真剣な表情をした要に、由希は首を傾げる。

「あかねが寝たんだよ」
「え?」
「あのあかねが、寝たの。車の中で。珍しいなって思っただけなんだけど、うちらのときの車内でもみんな寝てたんだよ」

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