怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「交霊会なんて、そんな恐ろしいものしようだなんて、頭がおかしいとしか思えないです。大島さんに、あなたもどう? 良かったらさっきのお喋りなお友達も一緒に――なんて誘われたけど、速攻で断ったですよ。お化けが本当に出たらどうするつもりなんですかね……」

 ぶるっと身震いして、呉野はかぶりを振る。

「本当、おかしな話です」
「おかしくなぁあぁあいっ!」
「キャアアア!」

 歌声とも、叫びともつかない大声をいきなり耳元で発せられ、呉野は飛び上がって悲鳴を上た。一目散に駆け出し、そのまま閉めてあった扉にぶつかると、高鳴る心臓を押さえて座り込む。そこに、ぬっと影が差し、爛々と瞳を輝かせる要の顔が覗いた。
 ぎくりと呉野の肩はすくんだ。

 勢いよくあかねと秋葉を見ると、二人は諦めろと言わんばかりの顔つきで首を横に振っている。

「交霊会。行きましょ♪」
「い、いやです」
「行くんだよ。呉野ちゃん」
「い、いやです」

 要はスカートのポケットに手を突っ込んで、スマートフォンを取り出すと、何かを打ち込み始めた。

「な、なにしてるです?」

 ビクつきながら訊くと、要はにんまりと笑んでスマホの画面を見せた。
 画面にはラインが表示されていて、緑の枠の中に【今、呉野ちゃんから聞きました。私も交霊会行きたいです! 行って良いですか?】の文字が。

「え、これって」

 混乱する呉野の耳に、ピコンというおなじみの音が届く。画面に新たに現れた白いふきだしの中には【良いわよ。来週だけど、来れる?】の文字。そして、発信者は――。

「大島ぁ!?」
「そ。大島さん♪」
「お前、いつの間にラインなんか交換してるんですかぁ! ぼくだってしてないのにぃ! しかも何通かやりとりしてるじゃないですか!」

 画面の上部には退院おめでとうございますの文字とスタンプが踊り、ありがとうの返信がにこやかな絵文字つきで表示されている。
 何度かやりとりしているのは明白だった。

「このあたしを誰だとお思い?」

 気取って髪を掻きあげる要を恨めしげに睨み付けて、呉野は項垂れた。

「情報の毒蜘蛛恐るべし……」





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