怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「マジで!? じゃあ、誰よ? 舌なかったんでしょ?」
「舌はなかったけど……」
首を傾げた由希の後ろから、想一朗は写真を覗いた。
「ああ。この人、確かに自殺らしいけど、舌がなくなって死んだってのは、ちょっと語弊があるんだよ」
「どういうこと? アニ」
「死体が腐敗してくるとバクテリアが舌や内蔵を溶かしたり、虫が食べたりするんだけど、この人も内臓が食われてる状態で発見されたから、当然舌もなかったんだよ。でも、死体には偶然カーテンがかかってたから、第一発見者には腹が見えなかった。で、土地柄、十六人谷の伝説があって、舌がない死体を見たもんだから、噂が広まったんだよ。呪いだなんだって」
「なんだぁ……! そうなの!?」
要はがっくりと肩を落とす。
「でも、じゃあ、わたしが視たのは誰だったんだろう?」
「だよね!」
由希の疑問に、要は元気を取り度した。
「それは、もしかしたらこの人かも知れないですね」
そう言って、呉野は恐々と、もう一枚紙を取り出した。受け取った由希は、驚いて声を上げた。
「あっ、この人!」
そこに写っていたのは、細い体に頬が少しコケた中年男性だった。その男性は、中学生くらいのときの田中と一緒に写っている。
「田中さんとやらの、伯父さんですよ。吉原のお兄さんに田中さんとやらを調べて欲しいとお願いしまして、お兄さんがお仲間に頼んでその人がさくっと調べてくれたのです。新幹線の中でメールで受け取ったんですが、コンビニでプリントアウトしておきましたです」
「やっだ! 呉野ちゃん優秀~!」
「でしょう! もっと敬いなさい、吉原!」
「敬ってるってばぁ! だからいつも可愛がってあげてるんでしょ!」
「お前のはバカにしてるっていうですよ。しかも、可愛がるのは後輩にです! 僕は先輩なんですからね!」
「ハイハイ、呉野ちゃん。いつも、ありがとね~」
「ったく!」
いつもの漫才を横に見ながら、由希は想一朗に尋ねた。
「あの、この人舌がなかったんですけど、どうしてですか?」
「自殺するときに、舌を切り落としてから亡くなったんだそうだよ。誰かに騙されたとかで、その人に罪を着せて死のうとしたらしい。でも、結局そいつはアリバイがあったし、検死結果で自殺だと断定されたんだけどね」
「ああ、それが猪口さんだったんだ」
腑に落ちたように要は独りごちた。
「舌はなかったけど……」
首を傾げた由希の後ろから、想一朗は写真を覗いた。
「ああ。この人、確かに自殺らしいけど、舌がなくなって死んだってのは、ちょっと語弊があるんだよ」
「どういうこと? アニ」
「死体が腐敗してくるとバクテリアが舌や内蔵を溶かしたり、虫が食べたりするんだけど、この人も内臓が食われてる状態で発見されたから、当然舌もなかったんだよ。でも、死体には偶然カーテンがかかってたから、第一発見者には腹が見えなかった。で、土地柄、十六人谷の伝説があって、舌がない死体を見たもんだから、噂が広まったんだよ。呪いだなんだって」
「なんだぁ……! そうなの!?」
要はがっくりと肩を落とす。
「でも、じゃあ、わたしが視たのは誰だったんだろう?」
「だよね!」
由希の疑問に、要は元気を取り度した。
「それは、もしかしたらこの人かも知れないですね」
そう言って、呉野は恐々と、もう一枚紙を取り出した。受け取った由希は、驚いて声を上げた。
「あっ、この人!」
そこに写っていたのは、細い体に頬が少しコケた中年男性だった。その男性は、中学生くらいのときの田中と一緒に写っている。
「田中さんとやらの、伯父さんですよ。吉原のお兄さんに田中さんとやらを調べて欲しいとお願いしまして、お兄さんがお仲間に頼んでその人がさくっと調べてくれたのです。新幹線の中でメールで受け取ったんですが、コンビニでプリントアウトしておきましたです」
「やっだ! 呉野ちゃん優秀~!」
「でしょう! もっと敬いなさい、吉原!」
「敬ってるってばぁ! だからいつも可愛がってあげてるんでしょ!」
「お前のはバカにしてるっていうですよ。しかも、可愛がるのは後輩にです! 僕は先輩なんですからね!」
「ハイハイ、呉野ちゃん。いつも、ありがとね~」
「ったく!」
いつもの漫才を横に見ながら、由希は想一朗に尋ねた。
「あの、この人舌がなかったんですけど、どうしてですか?」
「自殺するときに、舌を切り落としてから亡くなったんだそうだよ。誰かに騙されたとかで、その人に罪を着せて死のうとしたらしい。でも、結局そいつはアリバイがあったし、検死結果で自殺だと断定されたんだけどね」
「ああ、それが猪口さんだったんだ」
腑に落ちたように要は独りごちた。