乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~
5.謎めいたイケメンシーク
「な、なんだぁ?」
彼は大きな手で光る何かを握っている。それは一見、磨かれた水晶のように見えた。
モブ獄卒兵は見たことのない代物のようで、首を傾げている。
突然それから、汚らしい声が聞こえてきた。
『嫌がる女を犯すのは楽しいな。これだから獄卒は辞められん』
『ほんとうになあ。女囚担当でよかった。一番に味見ができるからなぁ』
『おれら獄卒は、ミストリア王国の法務室によって任命されたれっきとした役人だぞ!』
『そうだ! そうだ! 文句ならミストリア王国に言え! 女囚をおれたちにあてがってくれているようなものだからな!』
先ほどモブ獄卒兵がのたまった戯言が聞こえただけでなく、映像までが水晶に映っている。
「聖鏡水晶……」
ローゼマリアが小さく呟くと、モブ獄卒兵が「げぇっ!」とカエルを踏み潰したみたいな声を上げる。
「聖鏡水晶だって? 現実に起こったことを記録して再現できるという……こ、これが?」
「そ、そんな高価な代物をどうして……」
聖鏡水晶とは、この世界にあるレアアイテムのひとつである。
乙女ゲームの世界なので基本なにがあっても驚かないつもりだが、聖鏡水晶だけは驚いた。
(トゥルーエンド後のクリア特典で貰える、キャラのエピソードを好きなときに見ることができる記録装置じゃない。攻略キャラひとりにひとつという、レアアイテムのはず)
そのレアアイテムに、モブ獄卒兵の暴言を記録して突きつけるとは驚いた。
(なぜ彼は、これを持っているの……?)
モブ獄卒兵は言い返すすべもなく、拳を握りしめ、全身を震わせていた。
シークは鋭い眼光で彼らを睨みつけると、荒々しく恫喝する。
「さあ! 彼女に対する不当な拘束をほどき、公爵令嬢として節度ある対応を示せ! そして彼女に二度とその醜いイチモツを見せるな!」
シークの迫力ある威嚇的な物言いに、モブ獄卒兵は慌てて汚れたスラックスを引き上げた。
舌打ちしながらも、ローゼマリアのドレスのすそを戻し、荒縄をナイフで切る。
それを確認したシークが半月刀をホルダーに収めると、聖鏡水晶をカフタンガウンの内ポケットにしまいこんだ。
モブ牢番兵が負け惜しみのように、忌々しい顔を向ける。
「ふん。お、おれたちの行いが市井に広まるのはマズイから、とりあえずあんたに従ったが、この女がアリスさまを殺そうとしたのは事実だ。上からの指示がない限り、ここから出せんぞ」
「殺そうとした証拠が、どこにもないのにか?」
「こ、殺そうとしていない証拠だってない!」
それを聞いたシークが、石造りの天井まで響く声で高笑いした。
彼は大きな手で光る何かを握っている。それは一見、磨かれた水晶のように見えた。
モブ獄卒兵は見たことのない代物のようで、首を傾げている。
突然それから、汚らしい声が聞こえてきた。
『嫌がる女を犯すのは楽しいな。これだから獄卒は辞められん』
『ほんとうになあ。女囚担当でよかった。一番に味見ができるからなぁ』
『おれら獄卒は、ミストリア王国の法務室によって任命されたれっきとした役人だぞ!』
『そうだ! そうだ! 文句ならミストリア王国に言え! 女囚をおれたちにあてがってくれているようなものだからな!』
先ほどモブ獄卒兵がのたまった戯言が聞こえただけでなく、映像までが水晶に映っている。
「聖鏡水晶……」
ローゼマリアが小さく呟くと、モブ獄卒兵が「げぇっ!」とカエルを踏み潰したみたいな声を上げる。
「聖鏡水晶だって? 現実に起こったことを記録して再現できるという……こ、これが?」
「そ、そんな高価な代物をどうして……」
聖鏡水晶とは、この世界にあるレアアイテムのひとつである。
乙女ゲームの世界なので基本なにがあっても驚かないつもりだが、聖鏡水晶だけは驚いた。
(トゥルーエンド後のクリア特典で貰える、キャラのエピソードを好きなときに見ることができる記録装置じゃない。攻略キャラひとりにひとつという、レアアイテムのはず)
そのレアアイテムに、モブ獄卒兵の暴言を記録して突きつけるとは驚いた。
(なぜ彼は、これを持っているの……?)
モブ獄卒兵は言い返すすべもなく、拳を握りしめ、全身を震わせていた。
シークは鋭い眼光で彼らを睨みつけると、荒々しく恫喝する。
「さあ! 彼女に対する不当な拘束をほどき、公爵令嬢として節度ある対応を示せ! そして彼女に二度とその醜いイチモツを見せるな!」
シークの迫力ある威嚇的な物言いに、モブ獄卒兵は慌てて汚れたスラックスを引き上げた。
舌打ちしながらも、ローゼマリアのドレスのすそを戻し、荒縄をナイフで切る。
それを確認したシークが半月刀をホルダーに収めると、聖鏡水晶をカフタンガウンの内ポケットにしまいこんだ。
モブ牢番兵が負け惜しみのように、忌々しい顔を向ける。
「ふん。お、おれたちの行いが市井に広まるのはマズイから、とりあえずあんたに従ったが、この女がアリスさまを殺そうとしたのは事実だ。上からの指示がない限り、ここから出せんぞ」
「殺そうとした証拠が、どこにもないのにか?」
「こ、殺そうとしていない証拠だってない!」
それを聞いたシークが、石造りの天井まで響く声で高笑いした。