乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~
8.脳筋親衛隊長ダルトン
いつでも忠犬のごとくアリスにくっついていたダルトンが、突然目の前に現れた。
剣を携え、ギラギラとした憤怒の目つきで、ローゼマリアを睨みつけてくる。
「アリスさま殺害の罪で、きさまは指名手配されている。親衛隊長のおれから逃れられると思うなよ」
「親衛隊長……?」
確か彼はゲーム中、いわゆる肉体派、筋肉系といわれる攻略キャラであった。
攻略対象としては難易度が低く設定されており、食事の差し入れや、剣技を褒めると好感度が上がるという単純さで、人気はそこそこ。
特技はもちろん剣であり、ミストリア王立学園の剣術大会イベントで、ヒロインとのイベントが多数用意されていた。
剣術大会の決勝戦――
飛んできた折れた剣先によって腕をケガしたヒロインに、ダルトンが汗だくのシャツを脱いで巻きつけるというフラグが立てば、彼ルートである。
そのさい筋肉モリモリの雄っぱいを晒したことにより、一部のマニアなファンによって、彼を受けにしたBL同人誌が作られてしまった。
それぞれ好みのカップリングがあるようだが、じつのところローゼマリアも薄い本ならこっそりと読んだ記憶がある。
覚えているのはそのあたりで、親衛隊長という肩書は記憶にない。
「わたくしはアリスを殺害など企んでおりませんわ。親衛隊長さんとやら」
わざと名を呼ばず、謎の肩書で呼んでみる。
しかし彼は、それが嫌味であるとか、当てこすりであるとかまったく気がつかないようで、鼻の穴を膨らませて自慢してきた。
「アリスさまをお守りするための親衛隊筆頭なものでな」
「フォーチュンナイトとは違うのですね」
「フォーチュンナイトはミストリアの爵位持ちのみで結成されている。親衛隊は、おれが選りすぐった騎士で結成した」
訊いたてまえ、割とどうでもいいので、ローゼマリアは「ふうん」と返した。
するとダルトンが、馬鹿にされたと思い込んだのか、剣先をこちらに向けてくる。
「その親衛隊長として、アリスさまに犯罪者の始末を命じられたのだ! ずっと張っていた甲斐があったというもの。おれの手で殺してやる!」
「えっ……」
ダルトンは、頭のほうは少々できが悪いが、剣の腕は確かである。
その男が殺意を込めて剣を突きつけてきたのだから、ローゼマリアの喉が驚きでひゅっと鳴った。
(殺すですって? ローゼマリアはゲーム中に殺されていなかったはず……)
ジャファルが、すっとローゼマリアの前に出た。
「裏口を嗅ぎつけたのはきさまひとりか? 脳筋とばかり思っていたようだが、少しは知恵が回るようだな」
ジャファルの安い挑発に、単細胞のダルトンはすぐにカッとなった。
「なんだと! 親衛隊がここにくるのも時間の問題だ! 単におれが近くを探っていたので、いち早く駆けつけただけだ!」
ジャファルは、ばか正直なダルトンに侮蔑の視線を向けると、腰に差していたホルダーから半月刀をスラリと抜いた。
「では親衛隊とやらがくるまでに、きさまを叩きのめせばいいのだな」
「なにをっ! おれを出し抜けると思うな!」
ダルトンが素早い動きで足を一歩踏み出し、剣を突き刺そうとした。
「ジャファルさま、危ないっ!」
剣を携え、ギラギラとした憤怒の目つきで、ローゼマリアを睨みつけてくる。
「アリスさま殺害の罪で、きさまは指名手配されている。親衛隊長のおれから逃れられると思うなよ」
「親衛隊長……?」
確か彼はゲーム中、いわゆる肉体派、筋肉系といわれる攻略キャラであった。
攻略対象としては難易度が低く設定されており、食事の差し入れや、剣技を褒めると好感度が上がるという単純さで、人気はそこそこ。
特技はもちろん剣であり、ミストリア王立学園の剣術大会イベントで、ヒロインとのイベントが多数用意されていた。
剣術大会の決勝戦――
飛んできた折れた剣先によって腕をケガしたヒロインに、ダルトンが汗だくのシャツを脱いで巻きつけるというフラグが立てば、彼ルートである。
そのさい筋肉モリモリの雄っぱいを晒したことにより、一部のマニアなファンによって、彼を受けにしたBL同人誌が作られてしまった。
それぞれ好みのカップリングがあるようだが、じつのところローゼマリアも薄い本ならこっそりと読んだ記憶がある。
覚えているのはそのあたりで、親衛隊長という肩書は記憶にない。
「わたくしはアリスを殺害など企んでおりませんわ。親衛隊長さんとやら」
わざと名を呼ばず、謎の肩書で呼んでみる。
しかし彼は、それが嫌味であるとか、当てこすりであるとかまったく気がつかないようで、鼻の穴を膨らませて自慢してきた。
「アリスさまをお守りするための親衛隊筆頭なものでな」
「フォーチュンナイトとは違うのですね」
「フォーチュンナイトはミストリアの爵位持ちのみで結成されている。親衛隊は、おれが選りすぐった騎士で結成した」
訊いたてまえ、割とどうでもいいので、ローゼマリアは「ふうん」と返した。
するとダルトンが、馬鹿にされたと思い込んだのか、剣先をこちらに向けてくる。
「その親衛隊長として、アリスさまに犯罪者の始末を命じられたのだ! ずっと張っていた甲斐があったというもの。おれの手で殺してやる!」
「えっ……」
ダルトンは、頭のほうは少々できが悪いが、剣の腕は確かである。
その男が殺意を込めて剣を突きつけてきたのだから、ローゼマリアの喉が驚きでひゅっと鳴った。
(殺すですって? ローゼマリアはゲーム中に殺されていなかったはず……)
ジャファルが、すっとローゼマリアの前に出た。
「裏口を嗅ぎつけたのはきさまひとりか? 脳筋とばかり思っていたようだが、少しは知恵が回るようだな」
ジャファルの安い挑発に、単細胞のダルトンはすぐにカッとなった。
「なんだと! 親衛隊がここにくるのも時間の問題だ! 単におれが近くを探っていたので、いち早く駆けつけただけだ!」
ジャファルは、ばか正直なダルトンに侮蔑の視線を向けると、腰に差していたホルダーから半月刀をスラリと抜いた。
「では親衛隊とやらがくるまでに、きさまを叩きのめせばいいのだな」
「なにをっ! おれを出し抜けると思うな!」
ダルトンが素早い動きで足を一歩踏み出し、剣を突き刺そうとした。
「ジャファルさま、危ないっ!」