乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~
12.10年前の記憶を辿ってみても、わからないものはわかりません
通称『難攻不落のジャファさま』。
攻略が超弩級に難しいことから、掲示板でそう呼ばれていた。
(彼のスチル絵を見たことがなかったから、これまで気がつかなかった! 間違いない! 最高難度の攻略キャラ『難攻不落のジャファさま』……それがジャファルさま……彼よ!)
唖然とするローゼマリアに、ジャファルが困った顔を向ける。
「どうした? 立ち上がれないのか?」
「ジャファルさま……だわ……」
ぽかんとしたまま呟くローゼマリアを、彼はますます訝しげに見てくる。
「そうだ。ショックで混乱しているのか?」
ジャファルもこの世界の、攻略者であった――
すぐに、なぜアリスの取り巻きにならないのだろうという疑問が沸く。
(アリスより先に、わたくしと出会ったから……?)
そう、十年前と彼は口にしていた。
(極彩色で超弩級の極上シークに、わたくしが先にエンカウントしていたのね!)
覚えはまったくないが、どこかでローゼマリアは、ジャファルと会っているのだ。
(ええと……どこで? 思い出さないと……10年前だから、わたくしは8歳? ジャファルさまは28歳だから18歳のときね。シーラーン王国へ行ったことがないから、ジャファルさまがミストリア王国にこられたと思うのだけど……?)
しかし8歳の頃ではエンカウントと言っても、さっぱり記憶にないし、そもそも出会えそうな感じが一切しない。
両親に連れられ、ときどき王家主催のパーティに出席することはあったが、子ども心にあまり楽しいものではなく、途中で寝てしまった記憶ばかりだ。
ぼやっとしたまま、ジャファルの整った顔を見つめていたら、ジャファルが黒い髪をカリカリと掻く。
「しかたがないな」
彼が両手を伸ばしてローゼマリアの脇下に差し入れると、軽々と持ち上げてしまった。
「きゃ……」
「腰が抜けたんだろう? しっかり捕まっていろよ」
確かに恐怖で腰は抜けているが、それよりもジャファルが攻略キャラであることの事実のほうに気が抜けてしまっていた。
ローゼマリアの華奢な身体をしっかり抱きかかえると、そのままザクザクと砂地を歩いていく。
彼の肩に掴まっていたファイサルが、くりくりと大きな目玉をローゼマリアに向けてきた。
ジャファルを思い出せないローゼマリアを不甲斐ないとい言っているようで、心もとない気分になってしまう。
だが、もしかしたら10年前のことを思い出すヒントがあるかもしれない。
「ジャファルさま。ファイサルちゃんは、いつから飼っておられるのですか?」
「10年ほど前だ。急にどうした?」
鷹を連れているシークなんて、記憶に残っていないほうがどうかしている。
ローゼマリアはなんとかして彼のことを思い出そうと、首を傾げてうーんと唸ってしまう。
そんな考えを読まれたのか、ジャファルがふふっと笑った。
「兄が亡くなったときに忘れたくなくて、兄の名をそのままつけたんだ」
「お兄さまの名を?」
だから兄弟のようなものだと、彼は口にしたのか。
「ああ。こいつもまだ幼鳥だったな。こんなに凛々しい姿じゃなかった」
鷹の幼鳥の姿が思い浮かばない。結局なんのヒントも見いだせず、ローゼマリアは、ふうと息を吐く。
攻略が超弩級に難しいことから、掲示板でそう呼ばれていた。
(彼のスチル絵を見たことがなかったから、これまで気がつかなかった! 間違いない! 最高難度の攻略キャラ『難攻不落のジャファさま』……それがジャファルさま……彼よ!)
唖然とするローゼマリアに、ジャファルが困った顔を向ける。
「どうした? 立ち上がれないのか?」
「ジャファルさま……だわ……」
ぽかんとしたまま呟くローゼマリアを、彼はますます訝しげに見てくる。
「そうだ。ショックで混乱しているのか?」
ジャファルもこの世界の、攻略者であった――
すぐに、なぜアリスの取り巻きにならないのだろうという疑問が沸く。
(アリスより先に、わたくしと出会ったから……?)
そう、十年前と彼は口にしていた。
(極彩色で超弩級の極上シークに、わたくしが先にエンカウントしていたのね!)
覚えはまったくないが、どこかでローゼマリアは、ジャファルと会っているのだ。
(ええと……どこで? 思い出さないと……10年前だから、わたくしは8歳? ジャファルさまは28歳だから18歳のときね。シーラーン王国へ行ったことがないから、ジャファルさまがミストリア王国にこられたと思うのだけど……?)
しかし8歳の頃ではエンカウントと言っても、さっぱり記憶にないし、そもそも出会えそうな感じが一切しない。
両親に連れられ、ときどき王家主催のパーティに出席することはあったが、子ども心にあまり楽しいものではなく、途中で寝てしまった記憶ばかりだ。
ぼやっとしたまま、ジャファルの整った顔を見つめていたら、ジャファルが黒い髪をカリカリと掻く。
「しかたがないな」
彼が両手を伸ばしてローゼマリアの脇下に差し入れると、軽々と持ち上げてしまった。
「きゃ……」
「腰が抜けたんだろう? しっかり捕まっていろよ」
確かに恐怖で腰は抜けているが、それよりもジャファルが攻略キャラであることの事実のほうに気が抜けてしまっていた。
ローゼマリアの華奢な身体をしっかり抱きかかえると、そのままザクザクと砂地を歩いていく。
彼の肩に掴まっていたファイサルが、くりくりと大きな目玉をローゼマリアに向けてきた。
ジャファルを思い出せないローゼマリアを不甲斐ないとい言っているようで、心もとない気分になってしまう。
だが、もしかしたら10年前のことを思い出すヒントがあるかもしれない。
「ジャファルさま。ファイサルちゃんは、いつから飼っておられるのですか?」
「10年ほど前だ。急にどうした?」
鷹を連れているシークなんて、記憶に残っていないほうがどうかしている。
ローゼマリアはなんとかして彼のことを思い出そうと、首を傾げてうーんと唸ってしまう。
そんな考えを読まれたのか、ジャファルがふふっと笑った。
「兄が亡くなったときに忘れたくなくて、兄の名をそのままつけたんだ」
「お兄さまの名を?」
だから兄弟のようなものだと、彼は口にしたのか。
「ああ。こいつもまだ幼鳥だったな。こんなに凛々しい姿じゃなかった」
鷹の幼鳥の姿が思い浮かばない。結局なんのヒントも見いだせず、ローゼマリアは、ふうと息を吐く。