乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~
13.ここからはラクダに乗っての移動です
ジャファルが、バザールから離れた方向へ歩いていくことに気がつく。
「バザールに戻らないのですか?」
「ラムジがラクダを用意して待っている」
「申し訳ございません。わたくし……ご迷惑をおかけいたしました」
怒られるかと思ったが、彼の声は穏やかなものだった。
「まったくだ。なぜ突然私の手を離して、走り出したりした?」
「実は……」
ローゼマリアはキャラバン隊の中に、両親の姿を見たことを伝えた。
しかし彼は眉間に皺を寄せ、考え深げな表情をするだけだ。
「見間違いではないのか?」
「いえ、お父さまとお母さまでした。間違いはありません」
どうにかして、ジャファルに助ける手立てを見つけてもらいたい。
ジャファルの顔に自分の顔を近づけ、懸命に訴える。
「両親が心配ですわ! なぜキャラバン隊になど……どうにか助け出せませんか?」
すると彼が唇を寄せ、頬にちゅっと触れるようなキスをした。
その拍子に、気を遣ったのだろうか、ファイサルがどこかへと飛んでいった。
「ジャファルさま……」
「わかった。調べておこう」
「ありがとうございます。お願いいたします」
ジャファルなら、なんらかの手段を持っているような気がする。
無理難題でも、一見不可能と思えることでも。
なぜだろう。彼ならできる。そんな気がした―――
両親のことを彼にお願いしたら、今度は別のことが気にかかってしまった。
(さっきのモブ盗賊。わたくしを殺せと命じられたと言っていた。もしかしてアリスが? ここまで追ってくるなんて、恐ろしい執念だわ……)
ローゼマリアは彼の太くしっかりとした首に腕を回して、ぎゅっとしがみついた。
ジャファルの腕にも力が籠る。
ムスクとシトラス、ハーブと彼の汗の匂いが、とても安心できる。
二度とジャファルから離れない。ローゼマリアは心に固く誓った。
§§§
バザールのはずれで、ラムジが二頭のラクダを伴って立っていた。
ローゼマリアの姿を見ると、嬉しそうにかけよってくる。
「ローゼマリア奥さま。ご無事でございましたか」
どこからかはわからないが、ラムジはローゼマリアのことを「奥さま」という敬称をつけていた。
子どものように抱っこされたままで恥ずかしくなったローゼマリアは、小さい声で呟く。
「あの……下ろしてくださいますか? ジャファルさま」
「駄目だ。あなたの格好はひどすぎる。どうせここからはラクダでの移動だ」
「ラクダ……」
ローゼマリアはラクダに乗ったことがない。果たして上手く乗れるだろうか?
大きいラクダには、ふたり乗り用の鞍がついており、カラフルなラグがかけられていた。
ジャファルがラクダに近づき、丸い頭を撫でる。
優しそうな表情をしたラクダは、ふんふんと鼻を鳴らすと、地面に座り込んだ。
ジャファルの手によってローゼマリアは手前の鞍に乗せられるが、すぐにバランスを崩しそうになる。
「バザールに戻らないのですか?」
「ラムジがラクダを用意して待っている」
「申し訳ございません。わたくし……ご迷惑をおかけいたしました」
怒られるかと思ったが、彼の声は穏やかなものだった。
「まったくだ。なぜ突然私の手を離して、走り出したりした?」
「実は……」
ローゼマリアはキャラバン隊の中に、両親の姿を見たことを伝えた。
しかし彼は眉間に皺を寄せ、考え深げな表情をするだけだ。
「見間違いではないのか?」
「いえ、お父さまとお母さまでした。間違いはありません」
どうにかして、ジャファルに助ける手立てを見つけてもらいたい。
ジャファルの顔に自分の顔を近づけ、懸命に訴える。
「両親が心配ですわ! なぜキャラバン隊になど……どうにか助け出せませんか?」
すると彼が唇を寄せ、頬にちゅっと触れるようなキスをした。
その拍子に、気を遣ったのだろうか、ファイサルがどこかへと飛んでいった。
「ジャファルさま……」
「わかった。調べておこう」
「ありがとうございます。お願いいたします」
ジャファルなら、なんらかの手段を持っているような気がする。
無理難題でも、一見不可能と思えることでも。
なぜだろう。彼ならできる。そんな気がした―――
両親のことを彼にお願いしたら、今度は別のことが気にかかってしまった。
(さっきのモブ盗賊。わたくしを殺せと命じられたと言っていた。もしかしてアリスが? ここまで追ってくるなんて、恐ろしい執念だわ……)
ローゼマリアは彼の太くしっかりとした首に腕を回して、ぎゅっとしがみついた。
ジャファルの腕にも力が籠る。
ムスクとシトラス、ハーブと彼の汗の匂いが、とても安心できる。
二度とジャファルから離れない。ローゼマリアは心に固く誓った。
§§§
バザールのはずれで、ラムジが二頭のラクダを伴って立っていた。
ローゼマリアの姿を見ると、嬉しそうにかけよってくる。
「ローゼマリア奥さま。ご無事でございましたか」
どこからかはわからないが、ラムジはローゼマリアのことを「奥さま」という敬称をつけていた。
子どものように抱っこされたままで恥ずかしくなったローゼマリアは、小さい声で呟く。
「あの……下ろしてくださいますか? ジャファルさま」
「駄目だ。あなたの格好はひどすぎる。どうせここからはラクダでの移動だ」
「ラクダ……」
ローゼマリアはラクダに乗ったことがない。果たして上手く乗れるだろうか?
大きいラクダには、ふたり乗り用の鞍がついており、カラフルなラグがかけられていた。
ジャファルがラクダに近づき、丸い頭を撫でる。
優しそうな表情をしたラクダは、ふんふんと鼻を鳴らすと、地面に座り込んだ。
ジャファルの手によってローゼマリアは手前の鞍に乗せられるが、すぐにバランスを崩しそうになる。