乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~
第九章 悪役令嬢ローゼマリアVS.救国の聖乙女アリス直接対決!
1.ミストリア王城 アリスside 1
ミストリア王城――
主塔の最上階、来賓用の客間で、ひとりの女性が喚いている。
黒い髪、黒い目。可愛らしい童顔だが、目は釣りあがり、口は醜悪に歪み、唾を飛ばして怒りちらしていた。
彼女は、大人が五人は寝られそうなほど広いベッドに座り、尊大な態度で足を組んでいる。
その足元に、大きな身体のダルトンが膝をつき、身を小さくしていた。
その周囲には、どうしたものかとオロオロした態度の男が九人も立っている。
女性……救国の聖乙女であるアリスが、頭を床につけんばかりに項垂れるダルトンの後頭部に、パンプスの高いヒールをめり込ませた。
「ぐうっ……」
痛みをこらえるうめき声を聞き、ユージンを含む残りのフォーチュンナイトが、自分のことのように顔をしかめていた。
「ふがいないわね、あんた、親衛隊長なんでしょ? 女ひとりを殺すこともできないの?」
アリスの問いに、ダルトンが悔しそうに答える。
「いたのはローゼマリアだけではありませんでした。手練れの男に邪魔されたのです」
「えー? あんた、もしかして、その男に負けちゃったの? ミストリア王都学園で一番の剣の使い手だって自慢してたくせにぃ?」
アリスが馬鹿にしたようにそう言うと、足首をグリグリと動かしてダルトンの後頭部をヒールで押しつぶす。
「アリスッ! それ以上したら、ダルトンの頭に穴が開く。許してやってくれないか」
ユージンが慌ててアリスに取りなしてくるが、アリスは目を眇めて睨みつけるだけだ。
「仕方ないか。なにしろ『難攻不落のジャファ様』が相手だもんね。あんたら全員が束になっても適わないだろうし」
「難攻不落の……なんだって?」
訊き返すユージンを無視して、足置き替わりだったダルトンの頭から足をどけ、立ち上がる。
「ふふっ……いい考え、思いついちゃった。ダルトン、あんたをグローリー伯爵に売り渡しちゃおうかな」
ダルトンが頭を上げると、訝しい表情を浮かべる。
「は? グローリー伯爵とは……男色で有名な? なぜ、そのような……」
「ローゼマリアを逃した罰に決まってるじゃない。あんた、あの変態伯爵に可愛がられてきなさいよ」
「そっ、それだけはご容赦を……」
ふっふっふっ……としそうに笑うアリスに、ユージンが取りなしてくる。
「アリス。もう一度、彼にチャンスを与えてあげるべきだ。男色家に売るなど、あまりにも非道すぎる」
「うるさいわね! 私に指図しないで!」
振り向きざまアリスが、ユージンの頬を平手で叩いた。
ユージンは頬を赤くさせたまま、必死でアリスに訴える。
「アリス……指図じゃない。ダルトンは君のことを崇拝して……」
「だから、なに? 私は救国の聖乙女なのよ。偉そうに命令してこないで」
「命令では……」
ユージンも、そのほかのフォーチュンナイトたちも、まるで腫れもの扱いだ。
それでも彼女を咎めるものは、ここには誰もいない。
「まあまあ。アリス殿。そのへんにしてはどうですかな?」
貴賓室の扉が突然開き、初老の男が背後に取り巻きを数人連れて入ってきた。
主塔の最上階、来賓用の客間で、ひとりの女性が喚いている。
黒い髪、黒い目。可愛らしい童顔だが、目は釣りあがり、口は醜悪に歪み、唾を飛ばして怒りちらしていた。
彼女は、大人が五人は寝られそうなほど広いベッドに座り、尊大な態度で足を組んでいる。
その足元に、大きな身体のダルトンが膝をつき、身を小さくしていた。
その周囲には、どうしたものかとオロオロした態度の男が九人も立っている。
女性……救国の聖乙女であるアリスが、頭を床につけんばかりに項垂れるダルトンの後頭部に、パンプスの高いヒールをめり込ませた。
「ぐうっ……」
痛みをこらえるうめき声を聞き、ユージンを含む残りのフォーチュンナイトが、自分のことのように顔をしかめていた。
「ふがいないわね、あんた、親衛隊長なんでしょ? 女ひとりを殺すこともできないの?」
アリスの問いに、ダルトンが悔しそうに答える。
「いたのはローゼマリアだけではありませんでした。手練れの男に邪魔されたのです」
「えー? あんた、もしかして、その男に負けちゃったの? ミストリア王都学園で一番の剣の使い手だって自慢してたくせにぃ?」
アリスが馬鹿にしたようにそう言うと、足首をグリグリと動かしてダルトンの後頭部をヒールで押しつぶす。
「アリスッ! それ以上したら、ダルトンの頭に穴が開く。許してやってくれないか」
ユージンが慌ててアリスに取りなしてくるが、アリスは目を眇めて睨みつけるだけだ。
「仕方ないか。なにしろ『難攻不落のジャファ様』が相手だもんね。あんたら全員が束になっても適わないだろうし」
「難攻不落の……なんだって?」
訊き返すユージンを無視して、足置き替わりだったダルトンの頭から足をどけ、立ち上がる。
「ふふっ……いい考え、思いついちゃった。ダルトン、あんたをグローリー伯爵に売り渡しちゃおうかな」
ダルトンが頭を上げると、訝しい表情を浮かべる。
「は? グローリー伯爵とは……男色で有名な? なぜ、そのような……」
「ローゼマリアを逃した罰に決まってるじゃない。あんた、あの変態伯爵に可愛がられてきなさいよ」
「そっ、それだけはご容赦を……」
ふっふっふっ……としそうに笑うアリスに、ユージンが取りなしてくる。
「アリス。もう一度、彼にチャンスを与えてあげるべきだ。男色家に売るなど、あまりにも非道すぎる」
「うるさいわね! 私に指図しないで!」
振り向きざまアリスが、ユージンの頬を平手で叩いた。
ユージンは頬を赤くさせたまま、必死でアリスに訴える。
「アリス……指図じゃない。ダルトンは君のことを崇拝して……」
「だから、なに? 私は救国の聖乙女なのよ。偉そうに命令してこないで」
「命令では……」
ユージンも、そのほかのフォーチュンナイトたちも、まるで腫れもの扱いだ。
それでも彼女を咎めるものは、ここには誰もいない。
「まあまあ。アリス殿。そのへんにしてはどうですかな?」
貴賓室の扉が突然開き、初老の男が背後に取り巻きを数人連れて入ってきた。