乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~
7.ローゼマリアの決意
ジャファルが震えるローゼマリアの肩をしっかりと抱きかかえると、頼りがいのある逞しい胸に取り込んでくる。
「次期王妃……? アリスという黒髪の女か?」
ジャファルの問いに、女性が深く頭を下げた。
「はい。そのように名乗っておられました。そしてご一緒に、ミストリア王国の宰相もこられています」
「ほう? 女狐を背後で操っている古狸も動いたか? それでなにを喚いているというのだ」
ジャファルが問うと、臣下たちがおずおずとローゼマリアに視線を向ける。
「ミストリア王国内にて指名手配となっているローゼマリアという女性を引き渡せと要求しております。いないと返答しましても、そんなはずはないと居座りまして……むげにもできず困惑しております」
ローゼマリアの視界がグラつき、後ろに倒れ込みそうになる。
ジャファルの腕に力が籠もり、華奢な身体をすぐに受け止めてくれた。
だが、ともすれば床に膝をつきそうになってしまうほど、目の前がグルグルと回ってしまう。
やはりシーラーン王国に逃げ延びても、運命は追いかけてきたのだ。
「わたくしを……渡せと……」
これまで、なんども殺そうと狙ってきたのだ。
もし彼らに捕まったら、次こそは命を奪われるだろう。
「ローゼマリア。部屋を用意させるから、あなたはそこにいなさい。奴らは私が対応しよう」
「……え」
「どうした?」
か細いローゼマリアの声を拾おうとしたのか、ジャファルが顔を覗き込んでくる。
「……いいえ。わたくし、行きますわ」
ローゼマリアは心配げな彼に、はっきりとそう言い切った。
「なにを言っている! 奴らはあなたを害するつもりだぞ?」
「わかっております。どれだけ逃げても、アリスたちはわたくしを追い詰めてくるでしょう。それも執拗なまでに」
なぜならアリスは、自分の絶対的優位を疑っていないから。
すべてが思うがままことは進み、誰もが彼女に従い、世界が彼女を守る。
唯一、意のままにならないのが、ローゼマリアなのだ。
逃げれば逃げるほど追いかけてくる。排除をするために、地獄の底まで捕まえにくるだろう。
ローゼマリアは、いつかどこかでアリスと対峙しなければならないのだ。
であれば、ジャファルがそばにいてくれる、今がいい。
「会います。そして……アリスたちに、はっきりと言ってやりますわ」
「なにを?」
ローゼマリアは一呼吸置くと、決意を込めた目をジャファルに向けた。
「わたくしの運命はわたくしのもの。ヒロインだろうが主役だろうが、この世界の絶対的覇者だろうが、とことん刃向かってやりますわ」
「ローゼマリア……」
ジャファルが一瞬驚いた顔をしたが、すぐに口角を上げて面白そうに笑った。
ローゼマリアはこぶしをぎゅっと握り、もう一度決意を込めて心の中で誓う。
そう。とことん抗ってみせる。もう駄目だと思えるその瞬間まで足掻いてみせる。
ローゼマリアの、悪役令嬢という運命から――
§§§
「次期王妃……? アリスという黒髪の女か?」
ジャファルの問いに、女性が深く頭を下げた。
「はい。そのように名乗っておられました。そしてご一緒に、ミストリア王国の宰相もこられています」
「ほう? 女狐を背後で操っている古狸も動いたか? それでなにを喚いているというのだ」
ジャファルが問うと、臣下たちがおずおずとローゼマリアに視線を向ける。
「ミストリア王国内にて指名手配となっているローゼマリアという女性を引き渡せと要求しております。いないと返答しましても、そんなはずはないと居座りまして……むげにもできず困惑しております」
ローゼマリアの視界がグラつき、後ろに倒れ込みそうになる。
ジャファルの腕に力が籠もり、華奢な身体をすぐに受け止めてくれた。
だが、ともすれば床に膝をつきそうになってしまうほど、目の前がグルグルと回ってしまう。
やはりシーラーン王国に逃げ延びても、運命は追いかけてきたのだ。
「わたくしを……渡せと……」
これまで、なんども殺そうと狙ってきたのだ。
もし彼らに捕まったら、次こそは命を奪われるだろう。
「ローゼマリア。部屋を用意させるから、あなたはそこにいなさい。奴らは私が対応しよう」
「……え」
「どうした?」
か細いローゼマリアの声を拾おうとしたのか、ジャファルが顔を覗き込んでくる。
「……いいえ。わたくし、行きますわ」
ローゼマリアは心配げな彼に、はっきりとそう言い切った。
「なにを言っている! 奴らはあなたを害するつもりだぞ?」
「わかっております。どれだけ逃げても、アリスたちはわたくしを追い詰めてくるでしょう。それも執拗なまでに」
なぜならアリスは、自分の絶対的優位を疑っていないから。
すべてが思うがままことは進み、誰もが彼女に従い、世界が彼女を守る。
唯一、意のままにならないのが、ローゼマリアなのだ。
逃げれば逃げるほど追いかけてくる。排除をするために、地獄の底まで捕まえにくるだろう。
ローゼマリアは、いつかどこかでアリスと対峙しなければならないのだ。
であれば、ジャファルがそばにいてくれる、今がいい。
「会います。そして……アリスたちに、はっきりと言ってやりますわ」
「なにを?」
ローゼマリアは一呼吸置くと、決意を込めた目をジャファルに向けた。
「わたくしの運命はわたくしのもの。ヒロインだろうが主役だろうが、この世界の絶対的覇者だろうが、とことん刃向かってやりますわ」
「ローゼマリア……」
ジャファルが一瞬驚いた顔をしたが、すぐに口角を上げて面白そうに笑った。
ローゼマリアはこぶしをぎゅっと握り、もう一度決意を込めて心の中で誓う。
そう。とことん抗ってみせる。もう駄目だと思えるその瞬間まで足掻いてみせる。
ローゼマリアの、悪役令嬢という運命から――
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