乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~
第十章 ヒロインのはずなのに! アリスの敗北

1.これまで思い通りに動いてきたのに! アリスの不満

「アリスさん。なぜ私にそこまで執着するのですか? 命を狙う理由はなんですか? 先ほどの答えでは納得しきれませんわ。ほかに理由があるのでしょう?」

 するとアリスが肩越しに振り向き、意地悪い顔で笑う。

「あんたに執着なんかするわけないじゃない。私が欲しいのはジャファルさまよ。だって彼も私のものになる予定じゃない? ストーリーがちょっとズレちゃったみたいだけど、ここから軌道修正させるつもりよ。あんたが死ねば話も早いってこと」

「ジャファルさまを、悪辣なあなたに渡す気は毛頭ありません」

 小声でそう返すローゼマリアに、アリスが「は?」と聞き返してくる。

「なに? 聞こえなかったわ」

 アリスが問いかけてくるが、ローゼマリアは無視を決め込んだ。
 再びラムジが貴賓室の扉を開けると、一礼して入ってくる。

「ローゼマリア奥さまのご両親が到着しました。どうしてもジャファルさまにお渡ししたいものがあると……」

 報告を聞いて、一番驚いたのはローゼマリアだ。

「お父さまと、お母さまが?!」

 慌ててジャファルの顔を見ると、彼が優しい笑みを向けてきた。

「そうだ。あなたに黙っていて申し訳なかったが、キャラバン隊に紛れ込ませて、シーラーン王国に呼び寄せていた。追っ手の目をくらませるため、あえて別行動を取ったのだ」

「そうだったのですね……ありがとうございます。ジャファルさま……」

 ジャファルが「放置しろ」とラムジに指示を出していたとき、裏切られたと思ってしまった。
 助けてくれると約束はしてくれたが、実行はされていないと思っていた。
 それなのに、すでに水面下で動いていてくれたなんて――

「ありがとうございます……ありがとうございます。ジャファルさま……感謝いたしますわ。ええ、心から……」

 清らかな涙を浮かべて感謝を示すローゼマリアに、ジャファルが恩情深い笑みを向ける。

「愛しい妻のご両親を助けないわけがない。あなたの心を悩ませたくなかったので、あえて黙っていた。それだけは許してほしい」

「許してほしいだなんて……浅慮なわたくしを、お許し願いたいくらいです」

 この光景に、チッと舌打ちしたのは、もちろんアリスだ。

「なによ……フォーチュンナイトがきたら、すぐに全員まとめて殺しちゃうんだから。これまでも私の思惑どおりにものごとは進んできたのよ。今回だけうまくいかないなんてあり得ないわ。 この事態は異常よ」
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