乙女ゲームの断罪エンド悪役令嬢に転生しました ~超弩級キャラのイケメンシークがお買い上げっ?!~

9.大円満まであと少し

 ジャファルがラムジに後始末を指示すると、そっとローゼマリアの肩に大きな手を置いた。

「ローゼマリア。疲れただろう。私の部屋で休むといい」

「ジャファルさま……」

 ダークブラウンの優しさを帯びた瞳が、ローゼマリアをじっと見つめてきた。

(ジャファルさまに見守られていたから、アリスに負けず心を保つことができたのよ)

 ローザマリアは、そっと彼の胸に寄り添うと、小さい声で呟いた。

「愛しておりますわ。わたくしのジャファルさま」

 するとジャファルの手に力が籠もり、ローゼマリアの華奢な身体を強く抱きしめてきた。
 ともすれば骨が軋むほど、きつく抱かれているというのに。
 気持ちよくて意識がどうにかなってしまいそう。
 この幸せを掴むことができたのは、ローゼマリアが悪役令嬢という重い枷を打ち砕くことができたからだ。


 すべては超弩級の攻略キャラ、ジャファルのおかげだと、ローゼマリアは心の底から感謝した――


 ローゼマリアは、ジャファルの私室へと案内された。

 豪奢な宮殿ではあるが、彼の部屋はどちらかというと質実剛健、簡素で実用的と言えた。
 部屋の中央には四柱式のベッドが置かれてあり、天蓋からはオリエンタルな柄のカーテンが幾重にも流れていた。
 絨毯は彼らしく、鷹の模様を織り込んだ精緻なデザインである。

 壁にそって本棚が並べられており、たくさんの本が並んでいた。
 最奥にはアーチ型の窓があり、周囲をモザイクガラスで彩っている。
 ジャファルに手を引かれ、大きなベッドに並んで腰をかけた。
 ベッドサイドのテーブルに置かれているモザイクランタンが、七色のゆらゆらとした灯火を放ち、周囲をゆるやかに照らす。

「落ち着いたか?」

 ジャファルがローゼマリアの手を握り、優しく問いかけてくる。

「はい。ありがとうございます。ジャファルさま、本当に……いくら感謝しても足りないほどです」

「すべては愛しい妻のためにやったこと。感謝も必要ないし礼もいらん。できるならば……」

「できるなら?」

 ふと顔を上げると、柔らかな頬に彼の形のいい唇がちゅっと当たる。

「愛していると、言ってくれればそれでいい。先ほどのようにな」

 頬をピンク色に染め、ローゼマリアは照れくさくてもじもじとしてしまう。
 先ほどというのは、アリスを撃退し一安心したときに、つい漏らしてしまったひとことだろう。
 ローゼマリアは、優しく微笑むジャファルに問いかけてみた。

「教えていただきたいことがあるのです。十年前、わたくしとジャファルさまは、どこでエンカウント……いえ、出会ったのでしょう? ずっと思い出そうとしているのですが、どうしても無理なのです」
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