星空ラブソング
「これ、卒論書くために100人に実施するアンケートなんだけど、協力してもらえるかな?」
「もちろん協力します。それにしても、100人は凄まじいですね!」
三原君は、目を真ん丸にして驚いた。
そしてアンケートの内容を見て大きく笑った。
「沢田さんって、本当に豆が好きなんですね!」
「私もどうしてここまで惹かれてるのか分かんないよ」
「俺は、好きなことがあるのって素敵だと思います」
それから三原君は、真剣な面持ちでアンケ―トに記入し始めてくれたので、私はその間にお手洗いに立った。
席に戻る途中で、本棚に立てて置いてあったいくつかのタイトルの中に、身に覚えのある絵本が目に入り私は立ち止まった。
“そらまめくんって知ってる?”
そんなはずないのに、どこかから竹田さんの声が聞こえたような気がしてハッとして、小さく辺りを見渡した。
私は再び絵本に視線を向け手に取り、ページをゆっくりと開いた。
これが、あの時、竹田さんが教えてくれた本。そう思うと愛おしさと切なさが一気に押し寄せてきた。
考えすぎかもしれないけど、どうしてこのタイミングで目の前に現れるんだろう。
竹田さんのことは、もう考えないようにしようって思っているのに、景色の中に彼を見ている。
絵本のページをめくっていると、竹田さんはこの場所には存在しないのに、まるで違う形になってそばにいてくれているような気がして、寂しいのに温かな気持ちに包まれていくようだった。