星空ラブソング
「それ終わったら集計でしょ?」
「そうですね」
「Excel使ってやるよね?」
「はい。でもあんまExcel詳しくなくて、色々勉強しなきゃって思ってます」
「そっか。じゃあ、もし・・・」
竹田さんの声が、周りの賑やかさにかき消されてしまって聞き取れなくて、一歩近づいてから聞き返した。
「竹田さん、ごめんなさい。よく聞き取れなくて、もう一度・・・」
申し訳ない気持ちで声を大きめにしてそう言うと、次の瞬間竹田さんの顔が近づいて、私の左耳に吐息がかすれた。
どこか甘い声に私の身体は麻酔にかかってしまったかように固まってしまった。
「Excelのこととかで何か力になれることがあれば、いつでも何でも言って」
私は、頷くことに精一杯だった。体温が上昇していくのを感じていた。
うっかりグラスを落としてしまわないようにギュッと両手で握った。
竹田さんは、すぐにいつもの距離に戻って「頑張って!」と声援をくれた。
その場から離れてもなお、耳にかかった熱がなかなか消えなくて、席に戻っても心臓の音は加速していた。