星空ラブソング

固茹での黄身が濃厚で美味しい。

食べながら額縁に入って壁にかかっている写真が目に入った。

枝に止まった二羽の小鳥が向かい合っている微笑ましい写真で、それを見つめていると美喜江さんが不意に口を開いた。

「主人が撮ったのよ。あの人、カメラが好きだったの」

「そうなんですか!素敵な写真ですね。鳥たちの表情が、なんだかとても幸せそう」

「うふふ、ありがとう。休みの日になったらしょっ中カメラを持って出かける人だったわ」


美喜江さんは、とても懐かしそうな愛おしそうな顔で笑った。


「ご主人とは、どこで出会われたんですか?」

「お見合いだったの」

「なるほど...」

「私、長く病気してたから20歳頃までは病院生活でね。
いつか自分が、結婚できるだなんて思ってもみなかったのよ」

美喜江さんは、幼少の頃に両親を病気で亡くして、3つ違いの妹さんと親戚のおばさんの所で育てられたという。

おばさんは、気に触ることがあるとすぐに暴力を振るう人で、美喜江さんは妹さんを連れて逃げだそうとしたこともあった。

しかし、美喜江さんは、長い間肺の病気を患っていて、入退院を繰り返していたから思うように妹さんを養うことができず、おばさんに世話になるしかなかった時期があったという。

20歳なる頃にやっと完治して、退院後に銀行で働き始め、その頃ご主人とも出会ったそうだ。

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