星空ラブソング
「今、大学に通えてるのは主人のおかげなの。亡くなる前にね、病床で、お前がやりたいことはなんだ?って聞くの。やりたいことをまっとうしてくれって言ってくれたのよ」
美喜江さんは、微笑みを浮かべながら続けた。
「私、あの人がいなくなってあの人の言葉を思い出していると、ある日、大学に行きたいって思ったの。主人が、きっかけをくれたのね」
「美喜江さんの姿をご主人もどこかからみて喜んでいらっしゃいますね、きっと」
「そうねぇ。こんなに素敵なお友達とも出会えたし。主人が生きてたら、由依ちゃんのこと可愛いがっていたわ」
「こちらこそ、美喜江さんと出会えて嬉しいです。ご主人と美喜江さんみたいに、私もいつか誰かと巡り会えるでしょうか?」
美喜江さんは、何度か頷いてから言った。
「由依ちゃんは、大丈夫。こんなに優しくて素敵な子放っておくわけないわ」
私は俯いて黙り込んでしまった。
少しの沈黙を破ったのは、美喜江さんの穏やかな声だった。
「由依ちゃんは、今好きな人いるの?」
「はい。います」
「そう。それは素敵なことね。どんな人なのかしら?」
私が竹田さんを思い浮かべていると、美喜江さんが「もしかして、三原君?」と聞いたから首を横に思いっきり振ってしまった。
「あら、そう。違ったのね」
美喜江さんが残念そうな表情で私をみた。