星空ラブソング

あかりが灯る


5月が下旬に差し掛かった頃、私は卒論のテーマについて最終決定の前の最後の悪あがきをしていた。

卒論計画書は、すでに指導教員に提出したのだけど書き直しを申し出た。

テーマは、「造形のアートプロジェクトのマーケティングの手法について」だった。

私は幼少の頃から美術館を訪れるのが好きで、現在は、幼児から小学生を対象にした造形教室の講師をアルバイトとしてやっている。

だからというのもあって、卒論のテーマもアートと商業をかけ合わせたもので考えてみたのだけれど、いざ書こうとした時に筆が全く進まなかった。

教員からは、今月中までに新たな計画書を必ず完成させて書き始めるよう言われていて、5日余りとなった今月というタイムリミットと戦っている。

1限の授業を終えて昼休憩を挟んで3限まで空きコマの木曜日、私は10階の自習室で集中して、今日こそ計画書を完成させようと決めた。

午前11:00少し前、まだ誰も入室していない自習室は、窓のブラインドも閉まっていてまるで朝じゃないみたいに暗かった。

少し躊躇いながらドアをあけ、中に入ってからドアすぐ横にある照明のスイッチを押して明かりをつけた。

自習室を朝に利用するのも、一番乗りもはじめての経験だった。

ここは、定員40人程の備え付けコンピューターが利用できる便利な自習室だ。

私は、どこに座ろうかと見渡しながら、ドアから一番遠い奥の最前列の席に決めて向かった。

鞄から豆についての本やらノートを取り出し準備していると、男子学生が1人入ってきた。


彼は、私とは対照にドアに一番近い列の一番後ろの席に向かって行って着席した。


それから間もなくして教室に現れたのは、無愛想な職員だった。


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