星空ラブソング
「由依ちゃん、誰かを好きになるってとても素敵なことだと思うわ。無謀なことなんかじゃないわ」
「それが、叶わない恋だとしてもでしょうか?」
「私は、叶い方ってひとつだけじゃないと思うの。両思いにも色々な形があるんじゃないかなあ。でもそれって、随分と後になってわかることもあるのかもねぇ」
「そうなんでしょうか....」
美喜江さんの言葉の意味がイマイチよくわらなかった。
「竹田さんは、由依ちゃんを応援してくれてるのね」
「そうでしょうか?」
「ええ。竹田さんに甘えられるところは甘えちゃっていいんじゃないかしら。その、エクなんとかとか」
「エクセル?」
「そうそう。ごめんなさいね、私よく分かっていなくって。教えてくださるっていうんだから、そこは頼ってもいいんじゃない?」
美喜江さんは、ニッコリと笑った。
一緒にいたら竹田さんのことをもっと好きになってしまいそうで怖かった。
でも、一緒にいなければ後悔するような気もしていた。
夏休みや冬休みを入れたら、卒業まであと半年もない。竹田さんと会える日も指で数えられるくらいしかないかもしれない。
もしチャンスがあるのなら、夏休みがあけたら1日でも一瞬でも多く竹田さんに会いたい。
「美喜江さん、聞いてくれてありがとうございました」
「うふふ。そうだ、アンケート返すのは大学が始まってからでもいいかしら?」
「はい。よろしくお願いします」
論文のアンケートは、ケアハウスの職員さんたちや別の場所に住む美喜江さんの妹さんにも協力してもらえることになって、回答はまとめて夏休みあけに受け取ることになった。
100人までの道のりに終わりがみえてきた頃、蜩が鳴き始めていた。