星空ラブソング
竹田さんは男子学生の対応中で、後ろに並んで待っていると、小柄なおじさんの職員が出てきて私に要件を尋ねた。
竹田さんに視線を送ると、対応を一時中止しておじさんに「のちほど対応しますので大丈夫です」と伝えてくれた。
おじさんが奥に引っ込むと、学生の背中を隔てて竹田さんと視線が重なって、微笑をくれたから私も微笑み返した。
少ししてから男子学生の対応を終え、私が数歩前に進むと、竹田さんは「あれだよね?」と小さな声で聞いた。
「はい、アンケートの回答を預かってくださってると伺ったので」
「うん。ちょっと待ってて」
デスクに美喜江さんたちの回答が入ったファイルを取りに行って戻ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。助かりました」
竹田さんは、いえいえと言いながら目を細めて笑った。
ファイルの中を確認したら10枚入っていた。
ついに本当に100人達成してしまったらしい。
「竹田さん、100人達成しちゃったみたいです」
「良かったじゃん。おめでとう」
一番に竹田さんに報告ができて良かった。
言葉にならないくらい嬉しくて、私は幸せを噛みしめるように満面の笑みで頷いた。
帰りの電車で、美喜江さんに受け取ったことと目標の人数達成したことの報告メールをしたらすぐに返信が来た。
【由依ちゃん、100人達成おめでとう。
そうそう、竹田さんは、初めはちょっぴりムッとした感じにも見えたけれど、由依ちゃんのアンケートのこと言ったら親切に対応してくださいました】
ムッとした感じが想像できて、つい笑ってしまいそうになった。
10月になった。金木犀の柔らかな香りが、小鳥の囀りと共に届けられた朝は、新しい一日が始まるよと告げてくれているようだった。
夏休み後、初めての卒論指導日を迎えた。