星空ラブソング

木曜日は、1限に授業を受けてから自習室に向かう。それは以前からの習慣だった。

11時の自習室にパソコンの準備に来るのは、竹田さんではなくいつの間にか他の職員に変わった。

きっと前だったら切ない気持ちになっていたけれど今は違った。

今日はExcelを教えて貰う日で、3限終わりに自分のノートパソコンを持って颯爽と教務課の窓口に向かった。

竹田さんが奥から出てきて、「4階の407教室が、午後からずっと空き教室みたいだからそこに先に行っておいて」と言った。

私は胸の鼓動がいつもより大きいのを感じていた。

普段あまり利用したことのない407教室は、階の一番奥にある40名定員の小さな教室だった。

中は消灯されていて、窓のブラインダーも閉まっていたから真っ暗だった。

扉近くにある照明のスイッチに手を伸ばし、電気をつけてからコンセントが近くにある奥の最前列に着席した。

3人掛けの長机で端っこに座った。

パソコンを起動させていると竹田さんがやってきた。

「竹田さん、今日はありがとうございます」

「いえいえ」

頭を深々と下げる私に向けて竹田さんは微笑んだ。

そして、私の隣を一席あけて腰かけた。

空き教室は、自由に使用可能な学則だから急に誰かがくる可能性は高い。

だからか、椅子をひとつ挟んだだけの距離にいる竹田さんに余計ドキドキしていた。

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