星空ラブソング
「あの、隣に座ってもいいですか?」
「ああ、うん。その方が見やすいよね」
ほぼ距離がないくらい近づいて、私は竹田さんの洗剤の香りを知った。
「こうやって、こうやって」
竹田さんは、私が香りに胸が締め付けられそうになってることなんかつゆ知らず、カチカチとリズムよくクリック音と共に入力した数字を移動させていく。
そうだ、今はExcelに集中しなきゃと自分に言い聞かせた。
目で追っているのが精いっぱいになっている間に1つの集計が終わった。
「わわっ!すごい・・・」
「こんなの慣れれば簡単だよ。俺も初めは全然分かんなかった」
「情報概論の授業でも関数とかやってるんですけど苦手意識が強くて中々慣れられなくて・・・」
「徐々にやっていけばいいよ。きっと仕事でも役立つし知ってて損はないから」
「竹田さんは、Excelはどうやって習得していったんですか?」
「業務で使うたびにサイトで調べながら覚えたかな」
竹田さんは「誰も教えてくれなかったから、Google先生に頼るのが一番でさ」と付け加えて肩をすくめて笑った。