星空ラブソング
「へぇ、すげぇじゃん。そんなこともしてるんだ」
「子どもたちがつくる星座とそれにまつわる1つ1つの物語を聞くのも楽しいんです」
「物語があるのもの星座の面白いところだよね。でも、沢田さんって本当に多才だね」
そう言われて、急に恥ずかしさを覚えはじめた私は視線を落として首を思いっきり横に振った。
「私、大阪の田舎のほうの出身なんですけど、東京ってあんまり星が見えないところかと思っていたんです。でも、実際に来てみるとちょっとは見えてホッとしました」
「案外見えるんだよ。ていうか、大阪出身だったんだな」
竹田さんに出身地を告げ、私たちはここまでゆっくりと話したことがなかったことに気がついた。
まるで初対面の自己紹介みたいだ。
「実は大阪出身なんです。ただ、小さい頃から親の転勤で色んな場所に住んでたからか、周りからはあまり大阪の人っぽくないねって言われるんですけど」
「確かにそうだね。東京かと思ってたよ。じゃあ今はこっちで一人?」
「はい、そうですね」
「そっか。偉いな。俺も東京の大学だったから、こっちで一人暮らししてたことあったけど、寂しくて耐えられなかったんだよな。実家は、埼玉だからそんな遠くは無かったんだけどさ」
一見クールな竹田さんの口から寂しいという言葉を聞いて意外な面を知ってしまったような気がした。そして実家が埼玉ということを知った。
このままもっと色んな話をしたいと思った気持ちに、まるでストップをかけられるかのように4限終わりのチャイムが鳴った。
壁にかかった時計の針が、16時10分を指しているのを見て、この教室でいつの間にか90分が経っていたことにハッとした。
授業だったらゆっくりと時が流れるのに竹田さんといるとあっという間だ。
「もうこんな時間ですね。とりあえず集計頑張ります」
「そうだね」
手に持っていたどら焼きの最後の一口を食べきって、私は気合を入れ直すかのように言った。