星空ラブソング
壁の時計が間違っているのではないかと携帯の時計もみたけれど、11時40分を表示していたのは変わらなかった。
もう今日はこないし、パソコンの起動もしないのかなと諦めかけていたそのときだった。
扉が開いて、ちょっと息を切らした様子の職員が入ってきた。
「遅くなりました。申し訳ない」
私を見つけて言ったのか、まるでお侍さんみたいな低い声が聞こえた。
頭の中に、ちょんまげ姿が浮かんで笑いそうになった。
絶対似合うなあ。
私の呑気さと裏腹に今日の職員は、どこか切羽詰まっているようだった。
直感的に、今は声をかけない方が良い気がした。
でもせっかくすぐそこにいるのに、チャンスを逃すみたいで悔しい。
声をかけるんだ、ただ挨拶だけでもいいじゃない。
そう自分に言い聞かせたけど、猛スピードでパソコンのロックを解除し教室を出ていく姿を目で追いかけているので精一杯で、ちゃんと頭を下げることもままならなかった。