星空ラブソング
私は、厄介な穴にハマってしまったような気分だった。
いっそのこと穴に落ちきれたらスッキリするのかもしれないけど、中途半端な位置で挟まってしまってもがいてる感じ。
大学を出て、高鳴る鼓動を沈めようと駅に向かう途中の橋の上で立ち止まった。
青空を見上げ、目を閉じてから風を吸い込むようにして深呼吸をした。
瞼の裏に浮かんでくる彼の驚いたような大きく開いた目、どこか照れたような微笑に全身が包まれていくようだった。
さっきみたいに嬉しそうに笑った顔をもっと見れたらいいな。
私が今、彼の為に出来ることってなんだろうと不意に考えた。
彼のどこか不機嫌そうで硬直したようなこれまでの表情を思い出していた。
この仕事やってて良かったって思ったことあるかな?
私はアルバイトで造形教室の講師をやっているけれど、教室の帰り際、参加者から“ありがとう”とか“楽しかった”とか“また来たい”と、生き生きとした声と笑顔で言ってもらえる時がやりがいを感じる瞬間だ。
それが力となって自信につながってきたと思う。
もしかしたら、やりがいを感じてもらえるきっかけになることが、学生の私に出来ることかもしれないと自分の経験と重ねて思った。