星空ラブソング
こんな風に願っていたタイミングは、思いもしない時に訪れるものなのかな。


何故かさっき姿を消したはずの竹田さんが、真っすぐにこちらに向かって歩いてきていた。


私は、電光石化でもくらったかのように身体が硬直してその場に佇んだ。


涼花が隣で何か言っているようだけれど、その声もすり抜けていってしまうくらい、もう間もなく目の前にくる彼のことで一杯になっていた。

せめて挨拶だけでも交したいと願っていると、私が口を開く前に竹田さんの小さな声がすぐ近くで届いた。

「こんにちは」

「こ、こんにちは!」

スッと通り過ぎていく竹田さんの姿を目で追うように、私は勢いよく振り向いた。

私の声、届いたかな。

竹田さんは、振り返ることなく大学の外に出てすぐに左折して行ってしまった。

隣で一部始終を見届けてくれた涼花の興奮が頂点に達したようだ。

「ひゃー」とか「きゃー」言っている。

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