星空ラブソング
経済学概論の授業前の待ち時間、美喜江さんに手品の予行演習に付き合ってもらった。
「あらあら、すごいじゃない。
由依ちゃん手品師ね」
小さく拍手をしてくれる。
この調子で竹田さんにも披露できたらいいな。
「由依ちゃん、最近なんだかますます綺麗になった?」
「そ、そうでしょうか」
「輝いているわよぉ」
そう言ってニッコリと微笑む美喜江さんは、私の心の中を知っているみたいに見えた。
私はなんだか胸がくすぐったくて、言葉にならなくて下を俯いた。
こうして、6月3週目の木曜日を迎えた。
いつしか木曜は大切で特別な曜日になっていた。
今週は、チャンスとタイミングを誰かが用意してくれたかのように、11時前に自習室の扉が開いて、竹田さんが顔を覗かせた。
既に到着していつもの座席で本を読んでいた私は顔をあげた。
「こんにちは」
少し大きめの声で、ドアの方にいる竹田さんに届くように挨拶をすると、竹田さんはペコリとお辞儀をひとつ返してくれた。
話すなら2人きりの今がチャンスだ。
先に手品をやるか、用意した質問をするか迷ったが、質問を先にすることにした。
急に手品を披露する勇気はなかった。
竹田さんが、最終列までパソコンの準備を終えたところを見計らって思い切って声をかけた。