星空ラブソング

私のショックな気持ちに気づくわけもなく、涼花はニコニコの笑顔で三原君にも挨拶をした。

「はじめまして、狩野(かりの)です!」

「はじめまして、三原です」

「由依がいつもお世話になってまぁす」

「あ、いえ、こちらこそお世話になりっぱなしで・・・」


目の前で展開されている会話に苦笑いになる。

2人が軽く自己紹介を終えたあたりで、授業の時間が迫り私たちは教室に向かった。

涼花と私は、今年はこの商法の時間だけかぶっている。

三原君と別れたあとで涼花が言った。

「由依、あたしトイレ寄っていくから先行ってて」

「うん、わかったー」

一人になって大きなため息をついてしまった。

授業中は、なるべく竹田さんのことを考えないで集中しようと決めた。

授業が終わって、私が板書の最後の部分をノートに書いていると、背後から涼花が身を乗り出すようにして声をかけてきた。

「ね、由依」

「ん?」

「さっき授業の前に、トイレで指輪の落とし物拾ったの」

「ふーん」

「それで、このあと教務課の窓口に届けに行こうかなって」

「え、行く!私も!!」


耳が“窓口”というキーワードにぴくりと反応して、私は思わずガバッと勢いよく振り向いた。

涼花は、驚いたように後ろに引っ込んだ。
< 63 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop