星空ラブソング
私のショックな気持ちに気づくわけもなく、涼花はニコニコの笑顔で三原君にも挨拶をした。
「はじめまして、狩野(かりの)です!」
「はじめまして、三原です」
「由依がいつもお世話になってまぁす」
「あ、いえ、こちらこそお世話になりっぱなしで・・・」
目の前で展開されている会話に苦笑いになる。
2人が軽く自己紹介を終えたあたりで、授業の時間が迫り私たちは教室に向かった。
涼花と私は、今年はこの商法の時間だけかぶっている。
三原君と別れたあとで涼花が言った。
「由依、あたしトイレ寄っていくから先行ってて」
「うん、わかったー」
一人になって大きなため息をついてしまった。
授業中は、なるべく竹田さんのことを考えないで集中しようと決めた。
授業が終わって、私が板書の最後の部分をノートに書いていると、背後から涼花が身を乗り出すようにして声をかけてきた。
「ね、由依」
「ん?」
「さっき授業の前に、トイレで指輪の落とし物拾ったの」
「ふーん」
「それで、このあと教務課の窓口に届けに行こうかなって」
「え、行く!私も!!」
耳が“窓口”というキーワードにぴくりと反応して、私は思わずガバッと勢いよく振り向いた。
涼花は、驚いたように後ろに引っ込んだ。