星空ラブソング



負けたみたいで悔しいけれど、私は通勤金額を書いてしまっていた。

私はペンを借りて通学の金額に書き直し、申請用紙を再び渡した。

すると黙って判子を押してくれて、私に学生証を返却した。

駅の窓口で判子が押してある学生証を提示すると、学割の定期券が購入できる仕組みだ。


「ありがとうございました」


やっと手続きを終えられたことに安堵しながら、目の前の感じの悪い職員に軽く頭をさげてから窓口をあとにした。

イケメンなのは認める。

でも、正直もうあの人に対応してもらいたくないな。

まぁ、そんなに窓口に行くこともないのだけれど。

そういえばと、5階の教室に向かう階段を上がる途中で記憶が蘇ってきた。

さっきの職員は、私の元カレの俊(しゅん)君が、2年前の冬に高熱を出して倒れた時に介抱してくれた人だ。

俊君は、1個上の同じ学部の先輩で、今年大学を卒業した。

当時は、まだ彼氏ではなくて友達だった。

俊君は、期末テストが間近というのに、バイトを7連勤入れて学業との両立をしようとしていたが、流石に無茶がたたってしまい、私と校内を歩いていたところ倒れてしまった。

そこに駆け付けてくれたのが、教務課のさっきの職員だった。

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