星空ラブソング

パソコンに向かう、ピンと伸びた背筋と横顔が、凛として眩しくて格好良かった。


作業中だし話しかけちゃ邪魔になるかな。


それに話すといっても、正直何を言えば良いのかわからなかった。


窓口までの数十メートルの距離は埋められなくて、私は足の向きを変えて帰路についた。


本当は竹田さんの方に走り出したくてたまらなかった。私に気づいてほしかった。


家の最寄り駅を出た頃、辺りは暗がりに包まれ始めていて、夜空にはまんまるの月が姿を現していた。月の色が仄かに赤く見えた。


今夜の満月は、ストロベリームーンという呼び名があるとニュースで知った。見れたら恋が叶う月なんだって。


どんな願い方をしたらいいのか分からないけれど、私はただ、竹田さんへの思いの行き場が見つかりますようにと月に願った。


そして何よりも彼の笑顔を思い浮かべていた。

< 81 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop