星空ラブソング
「大丈夫です。今、忙しくなくなりました」
竹田さんは「そっか」と言って肩をすくめて小さく笑った。
たったそれでけのやりとりなのに幸福感に包まれていくのを感じた。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
「ここでですか?」
「うん。そのまま」
竹田さんは、小走りで階段を駆け下りて行ってしまった。
それから間もなくして、A2サイズのファイルを持って戻ってきた。
どこまで行って来たのかは分からないけれど、驚異の往復スピードに目を丸くしてしまう。
「は、早いですね!」
「ハハハッ。あのさ、8月下旬ごろに刊行される大学の新聞なんだけど、沢田さんどうかなって思って」
「私ですか?」
「うん。取材を受けて、こんな風に載るのどうかな?」
私たちは廊下の隅に移動して話をした。
竹田さんは、私の横でファイルを開いて過去の掲載記事を見せてくれる。
急なお誘いで、概要がよくわからないままなのに私は反射のように頷いていた。
「はい。お力になれることならやります」
「ホント?」
私は、昔から人に質問することは好きだけど質問に答えるのは苦手なほうだ。
頷いてしまったあとで、出来るかなと不安になってしまった。