星空ラブソング
教室に入り、時任さんが荷物を置いてカメラやノートの準備に取り掛かっていた時だった。

竹田さんは、私のすぐ横で小さな声で言った。


「頑張って。またあとで覗きにくるよ」


時任さんと2人きりで、取材を受けることになるとは予想していなかった。

だけど、竹田さんがいたら更に緊張してしまいそうだったからこの方が正解かもしれない。

いつの間にか私は不安げな顔をしていたのか、竹田さんが優しい声で言った。


「いつもどうりで大丈夫だよ」

「が、頑張ります」


緊張がピークに達しそうな中で頷いた。

それから、時任さんに後の仕切りを任せた竹田さんは教室を出ていった。

時任さんが、2人きりになったあとで笑いながら言った。

「事務の方と仲がいいんですね」

「えっ、あ、はい」

「取材で色んな学部のキャンパスにお邪魔するんですけど、こういう空気感の学生と職員は珍しいかもしれません」


どういう意図で言っているのか、私は内心戸惑っていた。


「お世話になっています。・・・事務の方には」

「とても良いことだと思いますよ。僕は。学内の雰囲気って、小さなところからつくられていくものだと思うんです。だから、学生とか職員とか教員とかそれぞれの立場がいながらにして、仲が良いっていいのは素敵なことですよね」

私は複雑な気持ちを感じながらも「そうですね」と頷いた。

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