星空ラブソング
それから、あっという間に時間は過ぎた。
時任さんは、インタビュー後に教室で、文面と一緒に掲載する上半身の写真撮影をした。
豆のことを語ったから、折角なので“豆好き”個性を全面に出そうということになった。
まず豆のイラストが表紙になったノートをデスク上にセッティングし、次にリュックからそらまめキーホルダーを取り外し右手に持った。更にもうひとつということで、豆の情報提供に特化した、私のSNSサイトの画面を表示したスマホを左手に持った。
私は、着席しカメラに笑顔を向けた。こうして愛用のグッズに囲まれて写真を撮ってもらえる日がくるとは、感動で胸の中に喜びが広がった。
取材が終わる頃には、最初の緊張が嘘みたいに時任さんと打ち解けて、途中覗きにきた竹田さんも安心したような面持ちを浮かべた。
取材を終えて、教務課の窓口に行くと先に戻っていた竹田さんが笑顔で迎えてくれた。
「では、いただいた沢田さんのご連絡先に原稿をお送りしますのでご確認お願いしますね。本日は、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「あ、それと今回の新聞の特集面なんですが、あと4人ほど掲載枠が残っていましてね。来月下旬の刊行なんで、実は、今キューピッチで人を探しているんです。もし沢田さんの周りでいい人がいたら。竹田さん経由でも良いんで教えてもらえます?」
時任さんは、私と竹田さんを交互に見ながら言った。
私は、「はい!」と威勢のいい返事をした。
すぐにとっておきの人たちが思い浮かんだ。
今回の取材のことは、まだ誰にも話していなかったけれど、涼花と美喜江さんに声をかけてみようと思った。
窓口で時任さんを見送ったあと、その場で竹田さんと2人きりになった。
彼の柔らかい声が頭上から降ってくるように届いた。
「お疲れ様」
胸の奥がぎゅっとなって言葉にする代わりに竹田さんを見上げると、唐突に一枚の紙を差し出してくれたから何だろうと思いながら受け取った。
印刷された文字を目で追うと、そこには“豆スイーツ専門店”と書かれていた。