言えなかった言葉 ~友達と同じ人を好きになって…
早苗の言葉に 俺は ハッとして 早苗を見る。
「私… 川村さんを 怒らせちゃったから。」
「喧嘩でもしたの?」
俺は 早苗の気持ちを 図りきれず。
早苗は 何故 俺を 呼び出したのか。
少しは 俺に 好意を抱いているのか。
川村とのことを 知っている俺に
安心しているだけなのか。
「ゆっくりでいいから。話してみて。」
俯いた 早苗の目は 俺の言葉で 赤く潤んだ。
小さく頷いてから 早苗は 話し始めた。
「私… 川村さんのこと ずっと拒んでいて… それで 川村さん 怒っちゃって。」
「拒むって 身体をってこと?」
俺が聞くと 早苗は 頷いた。
「どうして?川村のこと 好きじゃないの?」
「もう わからなくなっちゃって。」
「好きかどうか?」
「はい。川村さん 会う度 身体を求めてきて。でも 私 決心できなくて。ずっと拒んでいるから。」
「岩瀬さんは どうして 決心できないの?」
「わからない…でも そういう気に なれないんです。」
「川村と 付き合うことは 抵抗ないの?」
「私 最初は お断りしたんです。でも 川村さん 何度も誘ってくれるから。それで 付き合うことになったけど…」
「岩瀬さんは 付き合ってみて やっぱり違うなって 思っているんだ?」
「はい… 少し。」
” それなら 別れちゃえよ ”
俺は 零れだしそうな言葉を 必死で飲み込む。
早苗は 俺に 何を求めている?
今 俺が告白したら 悩んでいる早苗に
追い打ちを かけるような気がして。
俺は 憶病な意気地なし だっただけ。
早苗を 思いやるような ふりをして。
自分の臆病さを 正当化していた…