言えなかった言葉 ~友達と同じ人を好きになって…

岩瀬 早苗は 派手じゃないけど

整った顔立ちの 綺麗な女の子だった。


総務課や経理課には 女子社員が 多いけど。

俺は 早苗以外は 目に入らなかった。


どちらかというと 大人しくて。

気軽に 打ちとけるタイプじゃないけど。


必要があって 話すときは

いつも 感じよく 応えてくれた。


色白で 肌が綺麗で。

バランスの良い体型も 俺の好みだった。


職場だから 女子社員との 

距離感が わからなくて。


早苗が 気になっているのに

俺は早苗と 世間話しさえ できなかった。


ただじっと 早苗への気持ちを 

自分の中で 温めていたのに…


川村に 先に言われてしまったことで

俺は 自分の気持ちを 

川村にさえ 言えなくなってしまった。


『俺も 岩瀬さん いいと思ってたよ。一緒に 頑張ろうよ。』


あの時 そんな風に 言っていたら…

いつまでも 早苗への思いに

捉われずにすんだ かもしれない。


でも 俺は 言えなかった…

川村の言葉を 薄笑いを浮かべて 

聞いているだけで。


男らしくない自分を 嫌悪するだけだった。




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