言えなかった言葉 ~友達と同じ人を好きになって…

俺も川村も 仕事を覚えることに 

必死だったから。


さすがに 川村は すぐには 

早苗に 声をかけなかった。


早苗は いつも 淡々と 仕事をしていた。


女子社員の中には 媚びたような態度で 

接してくる子も いたけど。


俺にさえも…


俺は 鈍感を装って いつも

気付かない振りを 貫いた。


「寺内。総務の加藤さん お前に 気があるだろう?」

川村は 敏感に察して 俺に言う。

「はぁ?まさか… 俺が 頼りないから 世話を焼いてるだけだろう。」

「寺内 本気で そう思ってるの?女心 わかってないなぁ。アレは 絶対 寺内に 気があるって。」

「そんなこと ないよ。」

「いいじゃん。加藤さん 明るくて 可愛いから。お前 付き合っちゃえよ。」

「何言ってるの。職場だよ?そんなこと できないよ。それに 俺 加藤さんみたいなタイプは 苦手なんだよ。」

「もったいないなぁ。俺なら 女子の好意は 無駄にしないのに。」


川村は しきりに 加藤 千夏を

俺に 勧めてきたけど…


俺の 早苗に対する好意を 

川村は 察していたのかもしれない。


俺の存在を 警戒していたから。


俺が 千夏と 付き合うことを 

望んだのかもしれない。






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