言えなかった言葉 ~友達と同じ人を好きになって…

早苗と暮らす日々は 甘くて 優しくて。


俺達は お互いを尊重し合って

毎日の生活に 満足していた。


3月末に 早苗は 合格通知を受け取り。

念願の管理栄養士に なることができた。


「当分 同じ仕事を 続けるけど。少しだけ お給料も増えるのよ。」

「よかったなぁ。よく頑張ったよ 早苗。」

「うん。でも 雅也が 一緒にいてくれたから。雅也のおかげだよ。」

「まさか…俺 早苗の邪魔ばっかり してたじゃない?」

「ううん。それが 力になったの。」


早苗の 明るい笑顔は 自信に満ちていて。

そんな早苗を 支えたことが 

俺は 嬉しかった。


4月 新入社員が 入ってくる季節。

俺は 当時を懐かしく 思いながら

思い切って 川村に電話をかけた。


『久しぶりだね。寺内から 電話くれるなんて 珍しいな。』

川村の 屈託ない声は 少し俺を 怯ませた。


『うん…今日は 川村に 報告があってさ。』

『なんだよ 改まって。結婚でもするのか?』

『まぁ そんなところだ。式は これからだけど。もう 一緒に住んでいるんだ。』

『へぇ。おめでとう。まさか 寺内に 先を越されるとは…で?相手は どこで知り合ったの?』


俺は 大きく息を吸って 次の言葉を言った。


『川村。俺 早苗と 一緒に住んでいるんだ。』

『えっ!? 早苗って…あの早苗か?』

『ああ。岩瀬 早苗…』


一瞬 川村は 絶句した。

俺も 言葉に詰まって 沈黙して。

川村の 次の言葉を 待った。






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