思春期、夏【中学生日記】
すでに霧は晴れ上がっていた。
夏草がしっとり露に濡れている。そこを吹き抜ける風が、僅かに生温かった。
今日も蒸暑い一日になりそうだ。
緩くカーブした坂道を、オレは自転車で登る。ハンドルを左右に振り、全力の立ちこぎで登って行く。
登りきった道の向こう側、丘の稜線にはムクムクと白い雲が湧き始めていた。
「このモヤっとした思いは…… 部活にブツけて頑張るしかないか」
踏み込むペダルに力を込める。一瞬たりとも立ち止まることなど出来なかった。
解消出来ない精力が溜まっている。異性に対するムラムラした気持ち。
「奈緒ちゃん……」
またツブやいてしまった。
一日に何度名前を呼んだら気が済むのだろう。
目をつぶれば浮かんでくる、奈緒の後ろ姿。好きで好きでたまらないクラスメイト。
その制服のブラウスは、夏空に湧き立つ入道雲よりも白かった。
わずかに透けて見える、下着の肩紐。それがツイン・テールの髪に見え隠れしていた。
袖から伸びる両腕が、いつの間にか健康的に日焼けしている。
その色合いが、なぜか梨を連想させた。豊潤な甘い香りを放つ禁断の果実。
それはブラウスの白さより、オレの目には眩しかった。
夏草がしっとり露に濡れている。そこを吹き抜ける風が、僅かに生温かった。
今日も蒸暑い一日になりそうだ。
緩くカーブした坂道を、オレは自転車で登る。ハンドルを左右に振り、全力の立ちこぎで登って行く。
登りきった道の向こう側、丘の稜線にはムクムクと白い雲が湧き始めていた。
「このモヤっとした思いは…… 部活にブツけて頑張るしかないか」
踏み込むペダルに力を込める。一瞬たりとも立ち止まることなど出来なかった。
解消出来ない精力が溜まっている。異性に対するムラムラした気持ち。
「奈緒ちゃん……」
またツブやいてしまった。
一日に何度名前を呼んだら気が済むのだろう。
目をつぶれば浮かんでくる、奈緒の後ろ姿。好きで好きでたまらないクラスメイト。
その制服のブラウスは、夏空に湧き立つ入道雲よりも白かった。
わずかに透けて見える、下着の肩紐。それがツイン・テールの髪に見え隠れしていた。
袖から伸びる両腕が、いつの間にか健康的に日焼けしている。
その色合いが、なぜか梨を連想させた。豊潤な甘い香りを放つ禁断の果実。
それはブラウスの白さより、オレの目には眩しかった。