思春期、夏【中学生日記】
 オレのマブタの内側、その妄想スクリーンにいつも登場する異性。実はもう一人いた。
 七歳ほど、年上の(ひと)だった。
 スケベなヤツ…… とか思わないで欲しい。オレは真剣だ。

 その人は「パピコ先生」と呼ばれていた。今年、新卒で赴任してきた体育担当の女性教師。
「パピコ先生」とはもちろんアダ名である。本名は江崎先生。生徒からは、当初、グリコ先生と呼ばれていた。
 ほら、みんな知ってるお菓子のアレ。それがいつしかアイスの商品名に変わっちゃったってワケ。


 奈緒ちゃんとパピコ先生。二人はオレの妄想スクリーンの主役の座を、いつも取り合っていた。

 まるでアイドル・グループの、熾烈なセンター争いのようだ。
 まったく違うタイプの二人は、それぞれが魅力的だった。だからオレは、二人を交互に登場させていた。それがオレの、優しさだ。
 ただ、あの出来事が起きるまでは……

 あのプールでの出来事から、オレの頭の中は、パピコ先生一色となってしまった。
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