人魚の標本
「そう、それでなんとなく理系の高校や大学に進学したんだけど、ぼくは生物学っていうのがとっても楽しかったんですよ」
「うーん、まあ化学とか物理よりは俺も生物のがわかるかも……」
「孝也は前回も赤点ギリだったじゃん」
「いやいや、化学はぶっちぎりで赤点だから」
「それ教師としては見過ごせないね」
あはは、とみんなが笑うと孝也は絶妙に不機嫌そうな顔をした。
「まあだから、みんなにも理科好きになってほしいなって思って」
「ふーん?」
好きなものを好きになってほしい、かあ。
自分は先生みたいにこうなろうって思う日とかくるのかなあ、とため息をついた。
高校2年、もうすぐ夏休み。
二者面談で将来とか進路とか聞かれたけどうまく答えられなかった。