人魚の標本


「これ、ウロコじゃない?」

「ウロコ? 魚の?」

「たぶん、昨日お母さんがアジ捌いてたけどこんな感じじゃない?」

「言われてみれば、ぽいかもねぇ……」


 海沿いで、港があるこの町で魚というのは生活に欠かせない生き物だし食品でもある。

 その日あがった魚がその晩の夕飯になることだって珍しくない。

 北海道や北陸と並んでも負けないくらい魚がおいしいのだ。


「でもさぁ、魚のウロコ、にしては大きいよねぇ」

「そうだね、魚なら食べてる途中で気づく大きさだよね」


 口に入れるまでわからない、あとから吐き出すこともある魚のウロコ。

 棚の中にあるウロコは1枚が500円玉くらいの大きさはありそうだった。
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