そろそろきみは、蹴られてくれ。
考えて考えて、よくわからない。
「ん?」
気がついたらしい彼が、膝に手をつき、軽く頭を下げた。
「粉。落としてくれるんじゃないの?」
「……うん、まあ」
落として、軽く、撫でた。
「紗奈ちゃん?」
──っ!
わたし、いま、なんで撫でたの。
慌てて手を引っ込める。
「手伝ってくれて、ありがとう」
「ぜんぜん?」
目を細めて微笑む彼から、ぱっと目を背ける。
やっぱり、わたし、橘のこと──。
浮かべて、封じて、誤魔化して。
ほんとうは、とっくに、わかってる。