そろそろきみは、蹴られてくれ。
うわー、そこは、ドキドキしながら感覚を知る、じゃないの?
我ながら、残念。
「ハチマキも貸して」
「……ハイ」
もういまさらだ。あがくことをやめ、ハチマキを手渡す。
いくら橘が女子と話すことに違和感なくとも、さすがにこれは! と思う。思うよ、でも、──嬉しいなんて感じ始めた時点で、破綻している。
「よし、これでおっけー」
振り向いて顔を見ると、また、八重歯。
そんなに無邪気にわらわれると、こっちの調子が狂うってんだ。